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DAI-SONのアレやコレやソレ

創作ライトノベル、「ハーミット」「愚者の弾丸」を掲載。「ハーミット2」連載中。不定期更新です。

「愚者の弾丸」 EX.16 痛いの痛いの飛んで行け

番長「悪いな。
骨折り損の草臥儲けだっただろうに。」
ハインツとブリンクは、結果的にそこに居もしない人物を探していたということになったわけだ。
ハインツ「構いませんよ。もう争いは終わったのです。」
笑顔で答えるが、疲労の色が出ているあたり律儀に街のすみずみまで探してくれていたのだろう。
ブリンク「しかし、これからいかがなさいましょうか?
街は王が居なくなり離散、我々はゆく宛もありません。」
千代「国の方なら大丈夫だよ。
大臣と私たち三人で立て直していこうと思ってる。」
麗「いいのか?医者としての責務は。」
千代「私だってこの大騒動の原因のひとつなんだから、しっかり後始末をする義務の方が重いから・・・。」
ミツクビ「そんニャア~、ミィはついてきて欲しいニャン。」
千代「ううん。私は残るよ。
番長ちゃんは私がどういう性格かわかるから、理解してくれるでしょ?」
番長は呆れ顔で微笑む。
番長「お前がお前であるから仕方がないと、そういうことだろう?
でもよ、私だってまた共に戦いたい気持ちはあるんだ。
国が落ち着くまでに生き返られなかったら、また会いに来るよ。」
千代「じゃあ、私のお気に入りの本を貸しておくね。」
番長「そりゃどうも。」
サクリファイス「で?肝心の俺たちはどうするんだ?」
会話の輪に入れていなかった彼はぶらぶらと手持ち無沙汰にしていた。
番長「そうだな・・・草原で暗殺者たちを掃討して頭数を稼ぐことになるかな・・・。
なるべくは殺したくはないのだが・・・、こんな言い方はしたくはないが目的が目的だから仕方あるまい。」
摩利華「あ、あの、力になれるかはわかりませんが、方法がないわけではありませんわ。」
少し自信なさげに言葉を挟む。
番長「ん?どうした?そんなおずおずとしているなんてお前らしくもない。」
摩利華は言いたいことははっきり言うタイプのため、若干不自然だった。
摩利華「いいえ・・・その、ただ患者様から伺った話ですので、信ぴょう性に関しては保証しかねますわと思いまして・・・。」
番長「なんでもいい、人を傷つけなくて済むのならそっちの方がいい。」
摩利華「じ、実は”星の戦士”と呼ばれる方が向かいの大陸にいらっしゃるらしく、
彼の者の元にひとりの少女を送り届ければ、生き返るすべをくれてやろうと豪語しているらしいのですわ。
その少女の名を”マリン・クイール”・・・”星の戦士”との因果関係は不明ですが、
生き返るために手段を選ばない暗殺者たちにとっては興味がないみたいで、そもそもの話疑いだしたらキリがないのも事実です・・・。
ただ、”マリン・クイール”という少女が実在するのならば、噂は確信へと変わりますわ。
・・・という果てのない話ですわ。」
枷檻「なんだよ、そんな重要なキーパーソンなら早く言ってくれよ。」
摩利華「え?」
全員の視線が枷檻に集中する。
枷檻「いやいや、ほら、番長たちが来る少し前・・・なにかから逃げてきた金髪の華奢な女の子がいただろ?
この世界では医者が絶対的な純心だから匿って欲しい、追われているって言ってた子。」
千代「え?あの子!!?」
麗「まっさか・・・そんなうまい話・・・。」
番長「あるんだよ。千代の”真実にたどり着く能力”のせいでな。」
”真実にたどり着く能力”。
具体的に言うと”物探し”の能力といえば簡単だ。
〇〇はどこにある?と気にすれば、能力がそこにたどり着く運命を形成する。
〇〇は今無事だろうか?と気にすれば、安否が解る運命に導かれる。
ここには罠があるか?と気にすれば、罠があるかどうか解る運命に決まる。
ただ、この能力の特徴として、”罠があるかは解ったが、かかるかかからないかは自分の実力次第”なのだ。
つまり、”知りたいことを知ること”はできるが、”知ったことを解決する”のは自分自身の実力なのだ。
このチカラは千代のもつクロの本当のチカラで、千代自身の”真実”なのだ。
千代「どうする?」
意味はないとは思ったが、問いかける。
”マリン・クイールが実在することを知った”彼女が、
”星の戦士のところまで送り届け自らの生還というのぞみを果たして解決する”かどうかということを。
番長「女の子の子供服を揃えておけ。」
枷檻「決まりだな、隠れてもらってるところに案内する。」

宿屋の地下に有る一室。
湿っていたりはせず、クモの巣もはっていない。
大体この街の下には地上と変わらぬ程の地下通路が敷かれていて、しっかりと清掃されていて綺麗だ。
が、逆に市民同士には知れ渡っていて、あまり隠れるのに適していないのも事実であった。
隠れていた部屋には先客があった。
番長たちの立ち話を盗み聞きしていた暗殺者だった。
一足遅れて番長たちがたどり着く。
枷檻「ヤベェ!!”ドアが開いている”!!アイツには出るなといったはずだからやはり・・・!!」
部屋に向かい駆けてゆく一行。
中には、華奢で幼い金髪の少女と、いかにも筋肉の塊と言わんばかりの大男がいた。
男は頑丈そうな靴を履いていて、割と磨り減っているとことを見ると、そこそこすばやさもあるようだ。
そして、左手には大きなコバルトブルーの盾、右手には真紅の巨斧。
大男「おっと保護者か?
だが、動くんじゃあねぇぞ?
この小娘の首が飛ぶぜ?」
男はこちらに顔を向けながらジリジリと少女のもとへ迫る。
番長はしびれを切らしそうなって指がピクリと動くが、それよりも早く少女は動き始めていた。
腰のあたりからひらりとナイフを翻す。
しかしながら、この屈強な男の前には余りにも貧弱、針も同然のサイズだ。
男が気づいて振り向いた隙を狙おうか?
そう考えたのだが、少女はそのナイフを男にではなく、自らの心臓に突き立てる。
枷檻「おい馬鹿やめろ!!」
大男「な、なんて無茶な小娘だ!!人質であることを放棄するために自決を選ぶとは!!」
だが、驚くのはここからだった。
少女「”痛いの痛いの飛んで行け”」
大男「・・・?」
そう呟いた瞬間、瞬時に傷はふさがり彼女の出血は収まった。
それと同時に、男の胸部に刺し傷ができ、血を噴き出した。
大男「ば・・・かな・・・。」
爪を噛んでおどおどしている少女の前に、男は倒れる。
番長「”星の戦士”がこいつを求める理由がわかったな・・・。」
麗「あぁ・・・。」
ミツクビ「彼女がマリンちゃんニャン?」
枷檻「ああ。こんなチカラがあるなんて知らなかったがな・・・。」
マリン「お医者さん・・・。」
目の前に死体が転がっているにも関わらず、平然と迂回してこちらに歩み寄る。
サクリファイス「コイツ、血を見てもなんとも思わないのか?」
ブリンク「享年は召している可能性が否めませんね・・・。」
この世界では、その人間が最も輝いていた時期や望んでいる姿で墜ちてくる。
ただ、原則として享年以上の年齢の肉体を持つことはなく、反対に、80歳で死んでも未成年として現れることがある。
原因としてはここは魂を元に肉体を現象エネルギーから生成するために肉体年齢が精神年齢を超えることはないのだ。
ブリンクのように老体のまま墜ちてくるのはむしろ稀なケースである。
マリン「マリンはおばあさんじゃない。」
爪垢をとりながら、膨れっ面で言う。
マリン「マリンは戦争の中で死んだ。
だから、死体とか血は見慣れてる。それだけ。
もちろん、人殺しに慣れているわけじゃないけど。」
ブリンク「それは失敬。
ですが、どのみち血塗られた服では物騒です。お召し物を変えられてはどうでしょうか。」
摩利華「着替えなら用意してありますわよ。」
死体の処理はハインツと衛生兵に任せ、マリンには衣服を改めさせた。
マリン「みんな、お医者さんの仲間だったんだね・・・よかった。
あの”おまじない”はあんまり人に見せたくないから・・・。」
サクリファイス「どうしてだ?」
麗「俺たちは平和に暮らしていたから知らなかっただけで彼女は・・・いや、彼女の能力は有名なんだろう。
普通に考えてあんな強いアーツを持っていたら利用しようとする奴はいるだろうし、連れて行けば生還させてもらえる。
彼女の存在自体がこの世界を抜け出すプラチナチケットなんだ。
だから、見せただけで周りにいる人間が軒並み敵に変わってしまうってわけだ。」
マリンは小さく頷く。
番長「ところで、お前は”追われるのが嫌”なのか?”星の戦士に会うのが嫌”なのか?」
マリン「追われたくない・・・静かに暮らしたい・・・。」
番長「そうか・・・だが、静かに暮らすには根本を解決する必要がある。
私は生還する方法が欲しい、お前は静かに暮らしたい・・・。
私は両方解決したいから、まず”星の戦士”の元へ行って、真相を確かめたいんだ。
”星の戦士”がお前を手にするか、もしくは私がそいつを始末するかすれば、お前が追われる理由は無くなる。
私が願いを押し付けるのだから、もちろん責任として私がお前を守る。
”おまじない”も使わせない。
私はお前が静かに暮らせるように全力を尽くす・・・。
だから、”星の戦士”の元へ一緒に向かってくれないか?」
マリン「え、えっと・・・。」
マリンはまごまごしてしまう。
麗「いきなり子どもに向かって血眼になって懇願しても困惑するに決まってんだろ?」
番長「す・・・すまない・・・。」
気づけば、番長はマリンの肩をぐっと掴んでいた。
我に返ってその手を解く。
麗「マリンちゃん、要するに彼女が言いたいのは、ここにいたって次の追っ手が来るから、追っ手が来る原因を潰すために頑張ろうってことだよ。」
マリン「わかりやすい。」
そうは言ったものの、まだ手元を見つめてもじもじしている。
今まで追われていた身で、突然来た人間について来いと言われても困惑するのが当然だ。
ミツクビ「じゃあ、もっとわかりやすくいうニャン。
今からミィたちは、マリンちゃんの”仲間”ってことニャン。」
マリン「仲間・・・。」
ミツクビ「う~ん・・・”友達”の方がいいかニャン?
ほら、よく言うニャン!!”昨日の敵は今日の友”ニャン!!」
サクリファイス「いや、敵じゃねぇぞ!!?」
マリン「・・・ふふふっ。」
あまりの間抜け加減に思わず笑みがこぼれた。
ミツクビ「フーッ!!笑われたニャン!!子どもに笑われたニャン!!」
ついこの間まで戦っていた人間とは思えない和やかさに奇妙な安心感があった。
マリン「いいよ。ついていく。
でも、もし騙したりなんかしたら、”おまじない”でやり返しちゃうから。
パパから教えてもらった”おまじない”は絶対よ。」
麗「だってさ、番長。
責任重大だな。」
番長「お前らもやるんだよ。
”仲間”だろー。」
ブリンク「それはいいのですが・・・いったいどこを目指せばいいのやら・・・?」
番長「あっ。」
マリンに冷ややかな目を向けられる。
番長「だ、大丈夫だ。
さっきの男の所持品を洗おう。」
麗「やれやれ、前途多難だこと。」

千代たちとは一通り別れの挨拶を済ませて街を出るところをハインツに見送りしてもらっていた。
千代にはもう新たなる女王としての仕事が降りかかっていて大忙しらしい。
ハインツ「行き先がわからないのなら、芸術の街 ホログリフを目指してみてはどうでしょう。
港町を目指して様々な街をはしごしていれば、自ずとヒントはつかめるでしょうし、港町につけばとなりの大陸まで渡れます。」
番長「大いに助かる。」
大陸の地図を受け取ながら、苦笑いで答えた。
結局のところあの大男もヒントになるような品は持っておらず、あてもなく旅をすることを強いられてしまったのだ。
ハインツ「では、私はここでお別れです。」
門の前で彼は立ち止まった。
ミツクビ「え~、メシ大臣・・・じゃなくてハインツがいないと寂しいニャン・・・。」
しっぽを振って甘えた声を出すが、下心がまるで隠せていなかった。
ハインツ「私のことそんな風に思ってたんですね・・・。
まぁ、どちらにせよ千代様や摩利華様、枷檻様をお守りする命令を大臣に下されたので私の意思ではどうにもならないことです。
もちろん、不満はないのでご心配には及びません。」
彼にとってこの別れには無念などないと、表情が語っていた。
ハインツ「短い間でしたが、お世話になりました。
あなた方と出会えて、本当に良かったです。」
サクリファイス「そっか。・・・元気でな。」
一同も笑顔を送り返す。
ハインツ「ご武運をお祈りしております。我が新たなる女王の加護あれ。」
槍を立て、胸に拳を当てて跪いた。
彼の精一杯のねぎらいであった。