DAI-SONのアレやコレやソレ

創作ライトノベル、「ハーミット」「愚者の弾丸」「ハーミット2」を掲載。更新停止中です。

「愚者の弾丸」 EX.14 信じる者は救われず信じられた者が彼らを救う

マーロゥ「それでは第一問!!」
この部屋にはものが少ないせいか、やたらと声が響き渡る。
案外、そんな些細なことがプレッシャーになってしまうものなのだ。
マーロゥ「王が愛した姫はひとりである・・・マルかバツか!!」
千代「それはマルね。
代わりがきくのなら気を荒げたりしないわ。」
マーロゥ「お見事!!大正解!!それでは二問目に参りましょう・・・。
第二問!!大臣は男性である・・・マルかバツか!!」
千代「・・・!!?」
千代(わりかし難しいのがきちゃったかもしれない・・・どうしよう・・・。
でも”接待”って言ってたから単純に考えていいんだよね・・・。)
マーロゥ「おや?先ほどの方に比べて慎重ですねぇ~。
いいことですけど、どんなに思考を巡らせても答えは一つですよ。」
千代「マルね。」
マーロゥ「・・・・・・。」
少し前かがみになり、卑しい笑みを浮かべて黙り込むマーロゥ。
険悪な雰囲気が漂う。
そして、ニィと白い歯を見せて笑顔になった。
マーロゥ「正解!!お見事でございます!!
ふふふ・・・ドキドキしましたか?その”エサを待つカゴの中の鳥”のような顔がとても好きでしてね・・・だから焦らすのはやめられない。」
千代「ホントいい趣味してるね。」
ひょうひょうと振舞う彼を睨みつける。
番長「千代――」
番長はなだめようとしたが、
マーロゥ「NO!!なんであろうと助言はNG!!長髪のレディ、対決中の部外者は観葉植物さながらに棒立ちしていてください。」
すかさず止められてしまい、舌打ちをするしかなかった。
千代は感情が振り切れると危ない。
それはついさっき、門前でも痛いほど思い知ったことである。
マーロゥ「それでは運命の第三問!!
今、姫様は城内にいる・・・マルか!!バツか!!」
千代「・・・??そんなの簡単よ。
居る訳ないじゃない!!姫を失ったから王は暴君と化した・・・バツよ!!」
番長「馬鹿ッ!!引っ掛けだ!!」
彼女は冷静ではなかった。
マーロゥ「・・・・・・。」
番長の忠告を守らなかったのだ。
マーロゥ「Boooooooooooooo!!残念!!
判断を誤ったのだ。
千代「そんなのありえない・・・どうして・・・?嘘をついてるんじゃないの??」
マーロゥ「ン~~、嘘ではありませんよ。
だってここに来るときにスレ違いましたから。
天井に張り付いていたので気づかないふりをして放っておきましたがね。」
千代「お姫様が天井に張り付いてたって・・・?」
マーロゥ「それに何か疑問でも?」
千代「お姫様っていったらひらひらのドレスを着ていて重そうだから、張り付くなんてとても・・・。」
番長はため息をつく。
番長「だれがお姫様がドレスを着ているなんて決めたんだよ。
鎧を着てたり、下着姿だったり、どんな姿をしていたってお姫様はお姫様だろ?
天井に張り付く時くらい軽装してるだろうが。」
千代「まって、他にも聞きたいことが――」
マーロゥ「時間切れです!!GAMEOVER!!」
千代も、いともたやすく”クイズくん人形”にされてしまった。
マーロゥ「しかし、長髪のレディ・・・あなたの洞察力は流石というべきでしょう。
あなたの言ったとおりドレスなど着ておられず、それどころか一度も袖を通されなかった。
だが、この問題がどうして引っ掛けだとお気づきになられたのですか?」
番長「いや、私はてっきり城内で隔離されていて、何者かが幽閉しているものかと思っていたんだが・・・。
まさか潜伏しているなんてな・・・。」
マーロゥ「ン~、何者かの手を借りたのは間違いではないのですが、一度逃がしてもらったのです。
姫様はその間ずっと”野良猫”としてお過ごしでした。」
番長「野良猫・・・?猫・・・。
天井に張り付くほど跳躍力のある野良メス猫・・・。
まるでミツクビみたいじゃないか。」
マーロゥ「姫様の名を気安く呼ぶんじゃあない!!」
急に態度が豹変した。
今までのひょうきんな態度が嘘のようだった。
マーロゥ「姫様の名前を呼んでいいのは国王ただひとり!!
姫様への無礼は王への無礼と取るがいい!!」
だが、そんな変化など千代の両極端に比べれば大したことはなかった。
番長は動じないどころか呆れていた。
番長「テメェ、なに寝ぼけたこと言ってんだよ。
ミツクビは”お姫様”なんかじゃない。私たちの”仲間”だ。
それに、あのワガママ猫の飼い主は、偉そうなオッサンじゃあなくてテメェの手元にいる”サクリファイス・フォスター”と決まっているんだよ。」
マーロゥ「その侮辱的な態度・・・!!貴女だけは人形にしたあと、すぐにでも焼却して差し上げましょう!!
お仲間たちもカビ臭いねずみの巣の近くにでも置いておきましょう。」
番長「心配すんな、テメェには負けねぇよ。
さ、始めようか。その二人の奪還戦だからな?間違うなよ!!」
マーロゥ「当然!!では第一問!!この城の部屋の数は偶数である、マルかバツか!!」
番長「本気になってきたか・・・?
だが、答えはYESだ。この城の兵は規則正しく動くだろう?
だいたい四つのグループに分かれていることが、鎧に刻んである飾り紋でわかる。
しっかり四分割して警備できるように部屋は四で割ることができる数・・・すなわち偶数になっている。
ちなみに門前の兵士には飾り紋がついていなかったから、完全に内部で四分割だろう。
根拠としては足りない部分があるかもしれんが、王自身が強い事を考えると王室に兵士が集中していることは考えにくい。
むしろ弱き人間は退けていると踏んでいる。
だから、兵士は各部屋に均等に居るはずだ。」
マーロゥ「ぬぬぬ・・・なんという観察眼・・・正解!!
一問目は私の負けだ。
だが、あと二問ある!!それまでに絶対に仕留めますぞ!!
第二問!!妖精の加護がないこの街は、食料に困っている・・・マルかバツか!!」
番長「NOだね。ハインツというクソ真面目な兵士から聞いたんだが、妖精の拠点・・・まぁ住処ってところか?
そこに取りに行けばいいだけの話だと言っていた。
馬で行けば外敵に狙われることも少ないとも言っていたな。
だから、困っちゃいないだろう。」
マーロゥ「・・・正解だ。では、最後の問題と行こうではないか!!」
そう言って彼は二つの人形を床に積んで、どこから出したのか鋼の剣の切っ先を真下に向ける。
手を離すだけで二つの人形にその剣が突き立ってしまうような状況になった。
マーロゥ「最終問題だ・・・この二人の人形には実は私たちが見えいてる。
殺してはいなから当然なのだがね。
そして、この人形には意識もある・・・そこでクイズだ!!
この二人は自らが助かると思っている・・・マルか!!バツか!!」
番長「YESだ。」
マーロゥ「・・・まて・・・即答だと・・・?
この危機的な状況下に置かれた二人を見てYESの即答だと・・・!!?
気が狂ったのか!!考え直せ!!適当な勝負は許さんぞ!!」
番長「はぁ?意味が分かんねぇよ。
適当な勝負を許さねぇなら、回答を変えるなんて許されない行為だよなぁ?」
マーロゥ「変えられないとわかっているなら何故YESを選んだのだ!!」
番長「そいつらは私を信じている、私もそいつらを信じている。
信じるものは救われなくても、信じられているものは救われるんだよ!!
信じられていることを信じている人間に信じられている人間は絶対に負けない!!
だからYESだ。YES!!YES!!YESYESYES!!」
マーロゥ「ぐぐぐ・・・ぎぎぎ・・・ぬがぁ~~~ッ!!負けだ!!私の負けだぁ~~~ッ!!」
クイズくん人形二つは元の姿に戻り、傷も癒えていた。
番長のキズや服の汚れも無くなり、綺麗さっぱりベストコンディションになった。
サクリファイス「ふぅ~・・・ヒヤッとしたぜ。
あいつがあんな間抜けな問題を出さなかったら全滅かもしれなかったぜ。」
千代「えへへ、番長ちゃんが負けるだなんて思ってなかったくせに。」
番長「ところで、あいつはどうする?」
マーロゥはトボトボと階段を登ろうとしている。
サクリファイスは走って行き、マーロゥを捕まえる。
サクリファイス「そうだなぁ、さんざんコケにしてくれたから、こっちからも簡単なクイズを出してやろう。
・・・俺たちはこのままお前を許すと思っているか?・・・マルかバツか。」
マーロゥ「マルにしてください、お願いします・・・。」
サクリファイス「ヒヒヒ、正解だぜ?なぜなら許すかではなく許すと”思っているか”、だからな!!
お前だけは許してくれるなんて思ってるだろうよ!!
正解のご褒美に、走馬灯上映会にご案内だぜ!!」
サクリファイスはマーロゥをできる限り殺さずに痛めつけた。
千代「もうどっちが悪党かわかんないよ。」
番長「どっちでも正解だと思うぞ。」

ミツクビ「やっと着いたニャン・・・。」
王室の扉の前、異様な静けさに果てしない圧力。
ミツクビは知っている。
彼の王に近づくことができるのは自分だけである・・・と。
殺すことが出来るのは自分しかいない・・・と。
この時はまだ、番長たちはマーロゥと戦っている時間だった。
爆発してしまいそうな程に脈動する心臓をどうにかして落ち着かせ、重い扉を開ける。
その重量感に相反し、その扉は音も立てずにすっと流れるように開いていった。
国王「おお、ミツクビよ。
愛しきミツクビよ。おまえの顔が見たくて仕方が無かったのだ。」
ミツクビ「ふん、アンタが私じゃなくて、私の”体質”にしか興味がないことは知っているニャン。
その”体質”を持った子孫を残そうってハラなんニャン。
はっきり言ってあげるニャン。”そんなものはくだらない”。
アンタも解っているはずニャン。
この世界は死んでいる・・・新しい命など芽吹かないと・・・。」
国王「ええい、おまえまでそんな事を言うのか!!
・・・もう子孫を残すことなどどうでもいいのだ・・・ただそばにいて欲しい、それではダメか?」
ミツクビ「ダメニャン。
アンタは罪を重ねすぎたニャン。
多くの民を我が儘に動かし、混乱に陥れ、無益な争いをさせたことがどれほどの罪かわからないのならば、
ミィで無くとも誰ひとりとしてアンタのそばにいてやるやからなんて居るはずがないニャン。
死んでもなお過ちを犯す愚かな偽王よ、己が罪をその身を以て理解し、貴様が浴びるに惜しい光を浴びて果てるがいい!!」
ミツクビは走り出す。
一陣の風のように、あるいは荒波のように、あるいは一発の弾丸のように。
その爪は因縁を焼いて断ち切る為のもの。
高く飛び上がり、鋭く光る一閃を繰り出す。
だが、それは届くことはなかった。
国王「惜しかったな。心に迷いはない、だが、単純な経験や技術が足りないのではただの特攻に過ぎん。」
王の生の拳がミツクビの腹部を潰す。
きっと大腸やすい臓は破裂してしまっているだろう。
特殊な異能を使っているわけではないので、吹っ飛んだりはせず濡れた雑巾のようにぼとりと床に落ちた。
国王「しかし、野生は恐ろしい。
私に手加減をさせなかったからな。
お前が特訓を重ねていれば、私は本当にお前の前に倒れていただろうな。」

その少し後に、それぞれが開いた扉の前に集結する。
なんだかんだやっておきながら、銘々たどり着いたのは同時だった。
一同はこの紛争の結末と対峙する――。