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DAI-SONのアレやコレやソレ

創作ライトノベル、「ハーミット」「愚者の弾丸」を掲載。「ハーミット2」連載中。不定期更新です。

「ハーミット」 ACT.LAST 愚者・下

千代「い・・・たい・・・。」
枷檻「千代!!大丈夫か!!」
千代「痛いってば・・・。」
枷檻は千代の手を握り潰さんとばかりに強く握っていた。
枷檻「ご、ごめん・・・。」
枷檻は手を解き、涙を拭う。
枷檻「よかった・・・本当に・・・よかった・・・・・・。」
千代「ううん、むしろこれからだよ。
行こう。これが正真正銘最後の戦いだ。」
枷檻「あぁ!!」

番長「来たな・・・。」
門を挟み、勝ち残ってきた二人の戦士が眼光をぶつける。
摩利華「千代ちゃん・・・心の準備はよろしくて?」
千代「バッチリ!!」
門が開く。
番長「全力でかかってきな!!」
千代は応えるように全身、クロにより先制攻撃を放つ。
しかし、紙一重でかわされ、逆に拳を叩き込まれる。
クロに当たった拳の痛みが、シンクロして千代に伝わる。
千代「なんて威力・・・体術強化の能力かな・・・?」
もう一度クロで攻撃を試みるが、またしても紙一重でかわされ、強烈な拳が叩き込まれる。
千代「ぐぅっ・・・。」
番長「どうした?いいのは威勢だけか!!」
番長は的確にクロに打撃を叩き込む。
千代(妙だ・・・。
どこか動きが正確すぎやしないかな・・・?)
かわすのはずっと紙一重、必要最低限の動きだ。
奇妙なほどにスマートな動きだ。
千代は激痛の中、敢えてクロの脇をくぐるように小石を投げた。
番長はそれすら正確にかわす。
千代「これだ!!わかったよ・・・番長ちゃんの能力!!」
番長「ハッタリは通用しないぞ!!」
千代「ならば試してみる?”一定時間以上の連撃”で!!」
番長「!!?」
番長はバックステップで距離を取る。
千代「賢い判断だね、さすがは人を欺くだけの頭だよ。
それに、番長ちゃんにはこの時代に来た理由も話してもらわなくちゃあいけないから、そうじゃないと困る。」
番長「この短時間で見切るお前のほうが頭がきれると思うがな。」
千代「ううん、これは私のカンなの。
いや、正確に言えばクロの真の能力・・・。」
番長「何を言っているんだ・・・?」
千代「私は不自然にラッキーだったり、敵にしょっちゅう会ったり、探し物をすぐに見つけたり、タイムマシンについての夢を見たり・・・。
クロの本当の能力は、”真実にたどり着く能力”!!
だから、いずれ番長ちゃんはいやでもすべてを話すことになる!!」
番長「なんだそのデタラメな屁理屈はァァァ!!お前の能力がもしそうだとしても、お前は私に倒される!!それが”真実”だァァァァァァァ!!」
千代「試してみろおぉぉぉぉぉぉおおおおお!!」
番長の能力は、”三秒先までを客観視点で見ることができる”という能力だった。
だから、”三秒以上の連撃”をされてしまうとダメになるのだ。
しかし、それは単発で使ったらの話。
生命力を酷使し、体に負担をかければ三秒かわしてまた三秒と繰り返すことが出来るのだ。
番長は容赦ない千代の連撃に対して能力を過剰発動させて対応する。
千代「まだまだァ~~~~~~~ッ!!」
番長はとうとう吐血し、血の涙や鼻血を流し、血管は裂け息は荒く意識は朦朧としていた。
千代は攻撃の手を止める。
千代「もうやめてよ・・・矛盾してるよ・・・ここまで他人を利用してまで自分は傷つかずにスマートにこなしてきたのに、
今はこんなに壊れそうになってまで結果を求めるなんて・・・おかしいよ。
そこまでして未来に行く理由は何なの?教えてよ・・・。」
番長「はあー・・・はあー・・・。
なんだよ・・・勝ち誇りやがって・・・お前みたいなアマちゃんが平然と立っているなんて悔しくてたまらねぇよ・・・。」
千代「話してよ・・・全部さ。
番長ちゃんは、”真実”の夢の中じゃ仲間に囲まれて楽しそうにしてたんだ。
本当に他人を欺くだけの悪い人間なの・・・?
私は信じられないよ・・・。」
番長「・・・ったく・・・話さなくちゃあ失血死しちまうからな・・・しょうがねぇ、妄想デンパかなんかだと思って聞いてくれ・・・。」

30XX年・・・
遥か宇宙の彼方、セカンドアースが開拓されたのはもう昔の話・・・。
セカンドアースでは、ファーストアース・・・現代の地球には存在しなかった「超能力」がついに発見された。
しかし、それはただの氷山の一角。
”現象”、”賢者の石”、”生命力”・・・様々な常識が覆された。
そんなセカンドアースで”オールドマシーナリータウンの魔女”として恐れられたのが笛音番長・・・彼女であった。
この世の全ての現象を手中に収める”超常現象(アンチロウ)”というとんでもない力を持っていた。
ある人間は恐れて壊そうと、ある人間は欲して我が物にしようと、その思いは彼女の強大な力により沈んでいった。
とうの彼女自身は、数百年もの間年を取らずに生きてきたため、自分の存在が危険だと知っていて静かに暮らそうとしていた。
だが、ある日歴史は動く。
ほんの、ただのほんの一瞬の油断で彼女は封印の呪いをかけられる。
それを解くには強大な破邪の力を手に入れるか、過去に戻って呪いの根源を絶つことにあった。
彼女は仲間を守れなくなった憂いを抑えきれず、苦難の末にタイムマシンを作り上げ過去へと発った。
見事過去に戻り起源を潰したところまでは良かったのだが、そこからまた千年自分自身に会ってパラドックスが起きることに怯えながら、
愛しき仲間と恋人のことを思い、あといくつの孤独な夜を超えれば良いのか、と涙に明け暮れた。
その時に見つけたのが”アルカナバトル”という一筋の光。
彼女は何としてでもそれを手に入れ、未来へ帰り仲間をまた守らなければいけないと、”未来へ行く権利”を渇望した。

番長「これが私の全てだ。
私は帰るんだ・・・未来に行くんじゃあない・・・帰るんだ・・・。
たった十数年しか生きていないお前なんかに邪魔されてたまるかって話なんだよ!!」
千代「そう・・・やっぱり仲間のためだったんだね・・・。
番長ちゃんは、優しくて頼りがいのあるお姉さん・・・そうであることに変わりはなかったんだ。」
番長「なんだよ・・・同情するなら勝たせてくれよ!!」
千代「だめだね。
自分に嘘をついている人間なんかに、勝ちを譲ってやることなんてできない!!」
番長「フフ・・・じゃあ、とっととケリ付けようや・・・。」
千代は番長の足元に墨汁をぶちまけ、クロで固定する。
そして、拳を強く握り締め――――

「これは、自分に嘘をついてまで救って欲しくなかった大切な仲間たちの心の痛みだ!!
うだらァ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!!」

すべての思いは千代の素手に詰められ、番長へと放たれた。
番長は気絶し、後ろへ倒れる。
千代「終わった・・・。」
そこに、布を覆った様な拍手が響き渡る。
ボディスーツの男「おめでとう、見事、君が優勝だよ。」
枷檻「なんだテメェ。」
ボディスーツの男「この大会の主催者さ。」
番長は激しい体の痛みに、気絶から覚醒する。
番長「・・・!!?て、テメェ・・・その服は・・・!!」
ボディスーツの男「おや、生きていたのか。では、始末させてもらおうかな。」
千代「どういうこと?」
ボディスーツの男「お前は黙ってこれを受け取っておけばいい。」
半球状の機械を渡される。
千代「・・・これは、夢に出てきたタイムマシン・・・。」
ボディスーツの男「正夢を見たのか。面白い娘だ。」
番長「なぜお前が私が作った型とおんなじタイムマシンを持ってんだよ。」
ボディスーツの男「簡単な話さ。
お前が過去に行ったあと残骸を回収、20年かけて復元したんだよ。
何年かかったって同じ時代に戻ってくれば結果は同じだからね。
残骸を回収するのは楽だったよ。
目くらましに全力をかけたからね。
何も殺戮して奪わなくたっていいんだ。
だからお前の仲間は無事さ。良かったな。」
千代「っていうことはあんたも未来人・・・!!?」
ボディスーツの男「そのとおり。俺はここの誰から見ても未来人ってことだよ。」
番長「そうか・・・”主催者なんていない”だとか”神様の悪戯”だとかっていう予言は、
”予言した時点ではどの人間の主観でも存在しない”っつう意味だったのか・・・。」
ボディスーツの男「そして、目的はふたつ。
ひとつは”強制超能力発生装置”・・・アルカナカードの人体実験だ。
これは見事成功といえよう。
ふたつめは・・・”オールドマシーナリータウンの魔女”の抹殺。」
男の手の甲から刃の像が浮かぶ。
ボディスーツの男「その首、貰い受ける!!」
千代「駄目ぇッ!!」
ボディスーツの男「なっ!!?」
男はクロの打撃により吹き飛び、気絶する。
摩利華「その男を隔離しなさい!!」
警備員たちは男を屋敷の中へと運んでいった。

クロの様子がおかしい。
いつもなら霧のように消えるのに、今はボロボロと崩れ落ちていっている。
千代「あ・・・れ・・・?」
千代のコントロールも受け付けないようだ。
クロ「すまんな・・・あれが我の最後のチカラのようだ・・・。
きっと、この時代に”強制超能力発生装置”の技術が残らないよう、戦いが終わったら消える仕組みになったいたのだろう。
かの男は我が攻撃に移れたことに驚いていたからな。」
千代「そんな・・・せっかく仲良くなれたのに・・・あんまりだよ・・・いきなり過ぎるよ・・・。」
番長「仕方のないことだ。
元々私は戦いの中で殺される予定だったのだから、それが終われば用なしというわけだ。」
千代「あんな奴の手前勝手で消えるなんてひどすぎるよ・・・。」
クロ「でも、我と出会えたのも奴の手前勝手ということだ。」
千代「なんで・・・せっかく出会えた仲間なのに・・・。」
千代の頬には次々と悲しみが伝う。
クロ「案ずるな。
我は寄生しているのだ。
能力として感じ取れなくなっても、お前の中にずっと一緒にいるのだ。」
千代「クロ・・・。」
クロ「強く生きろ。
これからは我の力を借りず、自分と我々とともに戦ってきた仲間の力で・・・。」
千代「う゛わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
クロは完全に消滅した。
あとには番長からもらった手鏡だけが落ちた。
鏡には、千代を抱き寄せる番長の姿が写っていた。
番長「私には、お前の想い、痛いほどわかるぞ。
何百年と生きてきて、こんな別れをたくさんしてきたんだ。
でも、それを悲しいと思ってはいけない。
別れていった仲間が、きっと次の仲間を呼びに行ってくれているんだって。
私はそう考えて今日を生きているよ。」
摩利華「クロさんが消えてしまうほどに全身全霊を尽くしてくださったから、貴女を今その両手が包み込んでいますのよ。
責任を感じているのならば、その必要はありませんわ。」
枷檻「おら、シケた面すんなよ。
お前はこの町を救ったんだ、もっと胸張っていいんじゃねぇのか?」
ほんのひと月前までひとりぼっちだった。
でも、今はこんなにも自分を思ってくれる仲間が居る。
闘争の中でたくさんの人が死に、悲劇が繰り広げられたけれど、なにも全てが悲しみに沈んだわけじゃない。
この戦いで、私はやっと誰かと共に生きることができた。
いびつだけど確かな成長。
千代の中には黒く、固く、強く、鋭い意志が輝いていた。
千代「番長ちゃん。もう泣いてないよ。」
番長「そうか。」
そっと手を解く。
解いた手のひらに、タイムマシンを渡す。
番長「どういう風の吹き回しだ?」
千代「本当はね、”未来へ行く権利”なんて形のないものだと思ってたから破棄してしまおうと思ってたけど、
夢を見たとき渡せるものだって思ったし、番長ちゃんは仲間に見送られてきたんだって知ってるから、
ちゃんとケリをつけてから未来に帰って欲しくて勝ちを譲らなかったの。
自分に嘘をついてない素直な番長ちゃんになら渡せるよ。」
番長「おいおい、じゃあもし”知り合い”が実在してたらどうしたんだ?」
千代「いいや、番長ちゃんが未来人だってわかった時点で帰りたいのは番長ちゃんだから、知り合いさんに勝ってもらうのかなって思ってた。
どちらにせよ知り合いをバトルから救いたいっていうのは嘘だろうなって思ってたよ。
あんなに酷い切り捨て方をするだなんて夢にも思ってなかったけど。」
番長「ハハハ、もしかしたら、”真実にたどり着く能力”はお前自身の能力かもしれんな。」
千代「そうだ、これもあげるよ。」
千代はマントを脱いで番長に渡す。
番長「いいのか?」
千代「思い出の品っていいものでしょ?
それに、私にはもういらないもの。
これからは自らを包み隠さずに生きてゆくよ。」
鏡を拾い上げて、そう言った。
番長はマントを羽織る。
枷檻「へへッ、この世のものとは思えねぇほど似合わねぇぜ。」
番長「そういうお前も、おさげが似合ってないぞ。
出会った頃からずっと思っていた。」
番長はタイムマシンの操作を始める。
摩利華「もう行ってしまわれるのですか?いつ飛んでも同じではなくて?」
番長「いいや、長居すればするほど未練が残る。」
枷檻「本籍もねぇんだし暮らしていけねぇだろ。」
千代「そういう問題じゃない気がする・・・。」

番長「よし、これでいいかな。」
どうやら、設定が終わったようだ。
番長「騙すような真似して悪かったが、今まで本当にありがとう。
そして――――あばよ。」
千代「ううん、そういう時は”またね”って言うんだよ。
きっとまたどこかであえるかもしれないから。」
番長「やめてくれよ、それってまた過去に来る原因が出来ちゃった時じゃないか。」
千代「今度来たら、ちゃんと全部手伝ってあげるから。」
番長「ふふっ――――またな。」
千代「――――またね。」

こうしてひと夏の物語は幕を閉じた――――。

Fin