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DAI-SONのアレやコレやソレ

創作ライトノベル、「ハーミット」「愚者の弾丸」を掲載。「ハーミット2」連載中。不定期更新です。

「ハーミット」 ACT.30 塔

腕男に才能を引き出された犬は、異能力を感じ取り住宅街の外れの廃ビル辺りに来ていた。
ここは地主が何十年と放置していて、ゴロツキどもの溜まり場と化していた。
ゴロツキA「おい、またハーブの店が取り締まられたってよ。」
ゴロツキB「へへっ、いい気味だ。ビビってコソコソやってっから怪しまれんだよ。」
ゴロツキC「てめーだってスリや置き引きしてんだろ?変わんねーだろ。」
ゴロツキB「うるせぇんだよ!!この前車上荒らしがバレそうになったのはどこのドイツだっけなぁ?」
ゴロツキD「おい、食いもん切らしてんぞ!!カツアゲでもしようや!!」
汚い事柄が飛び交う人間のクズどもの楽園。
粋がるガキどもも近づかない真のゴミだまりであった。

8月10日(土曜日)。
連続殺人が途絶え、これは目的のある暴走だと確信した千代たちは捜索範囲を広げていた。
中央住宅街の外周、大通りや電車通りのすこし外れ。
売り地や有料駐車場が多く広がり、遠くに立ち並ぶマンションを一望できる。
歩いてゆくと、ラブホ街や閉店したスナック、廃ビルなどにぶち当たる。
退廃、混沌とした欲望と酒気が目や耳にいやでもまとわりつく。
何度かナンパを受けそうになることがあったが、枷檻が睨みを効かせると虚勢が崩れ去り立ち退いた。
進んでいくに連れ次第に人気は薄らいでゆく。
若者の影はなくなり、目が死んでいる老人や卑しく笑ういかつい男が時折建物の中に見える程度だ。
枷檻は不意に殺意を感じる。
ほかの平和ボケしたお花畑な二人に対してそういった気に対してはとても敏感なのだ。
枷檻「あぶねぇッ!!」
路地から飛び出してきたゴロツキをうまく丸め込み、馬乗りになる。
枷檻「動きは素人だな。安い女と思ってもらっちゃ困るぜ?」
ゴロツキD「クッソぉ!!なんだこの女!!本当によそもんか?」
枷檻は返す言葉を聞くこともなく、ゴロツキの右ポケットのナイフを取り上げる。
枷檻「こんなにイカツイ教鞭を持っちゃあ、子供たちが怯えちまうぜ?
大人として正しく見本になるように生きな!!クソッタレ!!」
そこへ犬が走ってくる。
犬は千代に向かって吠えている。
千代「うわわ・・・ちょっ・・・犬は苦手なんだけど・・・。」
後ずさるが、犬は吠えているだけで襲っては来ない。
ゴロツキB「なんの騒ぎだ?」
数人のゴロツキが建物から出てくる。
ゴロツキE「売春でもしに来たのかな?お嬢ちゃんたち。
申し訳ないが、今僕たちが欲しいのは女の子じゃなくてお金なんだ。
稼ぎ回ってくれるって言うなら嬉しいんだけど、そう待ってはいられないんだ。
今すぐ欲しいんだ。夕食もろくに買えない。」
摩利華「ご期待に添えず申し訳ありませんが、そのどちらでもありませんの。
私たちは、今このあたりで起きている連続殺人事件について調べておりますの。」
ゴロツキC「あぁん?もしかして俺たちのせいだって言いたいのか?」
摩利華「いいえ、その可能性は低いですわ。
殺人犯は暴走していて、猟奇的なために見境なく襲いかかる・・・標的でない場合は眼中にも収まらないはず・・・。
つまりこうして落ち着いて会話をしているのは、もし殺人犯ならばかなり不自然で、二重人格でもない限りはありえませんわ。」
ゴロツキA「割と頭は切れるようだが・・・”暴走”という言い方にはすこし違和感を感じるなあ・・・。
犯人が”暴走”しているというのに、”標的”とはこれはいかに?
明らかに”目的意識がある”前提で話していないか?嬢ちゃん。」
ゴロツキD「おい、そろそろどいてくれよ。」
枷檻(相手は増えている。離すのは惜しいが、仕方がないか・・・。)
ゴロツキD「ところでよぉ、その目的というのはよぉ、俺たちは”超能力者”だと思ってるんだが。」
枷檻「!!?」
摩利華「まさか!!?」
ゴロツキE「そう、俺たちの中に一人だけ、能力者がいるんだよ。
信じてるってことはそっちにもいるんだろう?」
不意にずっと吠えていた犬に、錆びて落ちた看板が直撃する。
犬は即潰れて死に絶えた。
千代「!!?」
そして、その血を洗わんとするように雨が降り出し、雷が鳴る。
老人「火事じゃ!!火事じゃあ!!誰か助けてくれ!!」
老人は慌てて飛び出したが、ひび割れたコンクリートの隙間に足を引っ掛けて倒れ、石に頭をぶつけて血を流す。
古びた家屋は燃え上がり、今にも飛び火しそうなほどに火の粉を撒き散らす。
近くには栗の木が生えていたようで、焼けた栗が四方八方に飛び散り始める。
かと思うと、飛ぶカラスが焼けてたれた電線に絡まり、宙吊りになる。
プロパンガスのボンベが破裂して、辺りに鉄片を撒き散らす。
栗や鉄片で窓ガラスは割られ、ガラス片が飛び散り地面にはあっという間にいろんな破片と血が散らばった。
枷檻「一体何がどうなってんだ!!?」
ゴロツキB「これが俺たちの能力、”塔”の暗示!!”禍の目覚め(トラブルメーカー)”!!」
ゴロツキC「能力の内容はいたってシンプル。」
ゴロツキA「不幸になる!!それだけよぉ。」
ゴロツキは慣れたものと飛び散る栗をせっせとかわす。
ゴロツキE「さぁ、お前らの能力者は誰だ!!?暴走しているやつが能力者なら、もうそう多くは残っていないはずだろう!!」
千代は目元に飛んできた栗を思わずクロで防ぐ。
ゴロツキD「お前かぁ!!弱そうだ!!ラッキーだぜ!!」
ゴロツキA「馬鹿ッ!!一人で突っ込むな!!ここまで勝ち残った相手だぞ!!」
ゴロツキDはクロの猛烈な一打をくらい吹き飛ぶ。
すると、騒がしかった周りがすこしおとなしくなった。
枷檻「能力者の代わりにダメージを受けたから能力が強制的に止まったってことか・・・。」
ゴロツキD「よくもやりやがったな!!?今度は全員で行くぜ!!」
摩利華「・・・!!いけませんわ!!この方たちは元から能力なんて頼りにしていない・・・。
集団で襲いかかることで勝ちを得ようとしているのですわ!!」
ゴロツキB「そのとおり!!隠れ蓑を作ってちょこまか逃げ回りやがった”皇帝”の暗示の野郎もこの方法でフクロにしてやった!!
次はお嬢ちゃんの番だぜぇぇぇえ!!」
こちらは攻撃を肩代わりしてしまったらおしまいのため、事実上2対5だ。
一斉に襲いかかられると、誰か一人以上は逃してしまう。
千代「ぐっ・・・がぁっ・・・。」
次々とゴロツキどもの拳を食らう。
ゴロツキA「はっはァ~!!こいつ、律儀にルールを守ってやがるぜ!!
あのなぁ・・・この戦いは、馬鹿正直にルールを守らなきゃ失格なんてことは、一言も書いてないんだぜ~!!」
ゴロツキC「とどめだァ!!」
その時、千代の頬が微かに笑う。
ゴロツキCの顔面めがけてクロの全力の連撃が放たれる。

「うだらァ~~~~~~~~ッ!!」

千代「この時を待っていたのよ。
決定的に止めとなる一撃を放ってくるその瞬間をね!!
ナイフがあったのに殺してこないなんて、やられたいって言っているようなものよ!!
・・・意外とあんたたちってチキンなのね?」
ゴロツキたちは唖然とする。
千代「アルカナバトルのルール!!気絶させて倒すには、最後の一撃が能力者による行動である必要がある!!
わざわざトドメ宣言をするなんて、律儀にルールを守っていたのは、あんたたちも同じよ?」
クロ「お前ら、まだやるか?」
ゴロツキE「ひえぇぇぇえ!!一目散に退却だ~!!」
ゴロツキB「待て!!まず消防車を呼ぶんだ!!」

腕男「ふへひ・・・へへふ・・・そうか・・・やっと見つけたぞ・・・犬っころを送り込むまでもなくドンチャン騒ぎしやがって・・・・・・!!」
渇いた獣は徐々に彼女らとの距離を縮めていった。