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DAI-SONのアレやコレやソレ

創作ライトノベル、「ハーミット」「愚者の弾丸」を掲載。「ハーミット2」連載中。不定期更新です。

「愚者の弾丸」 アフターストーリー 老人と少女の結末

歪曲して、世界の狭間に呑まれて行く番長を見送った四人。
サクリファイス「終わったんだな。」
跡形もなくなって、元からそこになにもなかったかのように風景は広がっている。
ミツクビ「偶然かしらないけど、カインドみたいなところにたどり着いちゃったニャン。」
崖の下に広がる穏やかな町には、妖精たちがせっせと花の世話をしているのが遠巻きに見える。
サクリファイス「とりあえずは、ここが安住の地ってことでよさそうだ。」
コッパの手下が通ったルートを使って、町に降りられそうな場所を探す。
マリン「これからはどうするの? 」
ちょこちょことついて行きながら尋ねる。
サクリファイス「ムカつく奴が出るまで、のんびり暮らそうと思うよ。」
ミツクビ「ミィもそうするかニャー。」
すっかり緊張感のない声で呑気なことを言う。
サクリファイス「それに」
急に立ち止まったせいで、マリンはサクリファイスの背中にぶつかる。
サクリファイス「団長がいなくなったから、自警団は解散だしな。何か、不特定のものを守る戦いは、もうしないさ。仲間が傷つけば、やり返すがよ。」
そう笑いかけながら、マリンの頭を撫でた。
多少不満な顔だったが、いやがりはしなかった。
マリン「おじいさんは? 」
無邪気な問いかけがブリンクの方にも向く。
ブリンク「誠に申し訳ありませんが、皆様に謝らなければならないことがあります。」
サクリファイス「ん? なんだよ。」
少し先を行っていたミツクビも振り向き、立ち止まる。
ブリンク「私は、実はれっきとした目的があって、あなた方についていっていたのです。」
ミツクビ「ええー!! 」
マリン「ふーん。」
サクリファイス「そうなのか? 」
驚く様は三者三様だったが、けっして怒ってはいなかった。
ブリンク「おや、てっきり怒鳴られるかな、と思ったのですが。」
悪びれて笑うブリンク。
サクリファイス「今更だろ。邪魔をされた訳でもないんだから。」
淡白な返事だった。
本心からそう思っていないと出ないような、そんなものだった。
サクリファイス「で、その目的ってなんだ?」
再び歩き出しながら、暇潰し程度に聞き返す。
ブリンク「実は、私は星の戦士の正体を知っているのです。」
ミツクビ「ニャニャ、知り合いだったのかニャン? 」
ブリンク「ええ、ここに墜ちて来てからずいぶんたちますから、大部前の話ですがね。」
サクリファイス「その時は生き返る方法を教えてもらわなかったのか? 」
ブリンク「いえ、逆ですよ。彼も生き返る方法を探して旅を始めたのです。」
サクリファイス「だから、今は関わりがないってことか。」
ブリンク「ええ。生き返る方法があると言う噂は以前からあったものですからね。しかし、当時は100人殺せば、なんてはっきりとした情報もありませんでしたから、明確な情報を手にいれるために旅に出たのです。」
サクリファイス「ふうん、じゃあ、番長が確実に生き返る方法を知る確証があったってことか。」
ブリンク「そうなりますね。だからこそ、協力を惜しまなかったところもあります。」
サクリファイス「そっか~。」
ミツクビ「って、ちょっと待ってニャン。」
さっきまで話半分といった顔をしていた彼女が、突如聞き返す。
ミツクビ「じゃあ、なんでマリンが必要なのニャン? 」
サクリファイス「たしかに、言われてみれば。
パラレルを殺すために強力な戦力が欲しいなら、他のやつでもいいのに。」
ブリンク「その答えは、生き返る方法にありました。元々は、星の戦士の噂を聞いたとき、よくないことをたくらんでいるのではないか、と思っていたのですが、探していたマリンさんが、"以前見たことのあるマリン"と違ったので、直接会って目的を訊かなくてはならないと思ったのです。そして、たった先程、パラレルを殺せば生きて帰れるという答えを知って、納得しましたよ。」
サクリファイス「星の戦士のもとにいるはずのマリンの蘇生、ということか。」
マリン「じゃあ、私、殺されるの? 」
怯えた顔になるマリン。
だが、ブリンクは首を横に振る。
ブリンク「少し違います。なぜ、というのは、私たちの正体を知ったらわかるでしょう。」
サクリファイス「なんだよ。勿体ぶるなよ。マリンが怯えてるじゃねぇか。」
ブリンク「……言えば、マリンさんが複雑な気分になると思って、その場につくまで言わないでおこうかと思ったのですが、それもそれでモヤモヤしてしまいますな。」
ブリンクは、マリンの方に目を合わせた。
マリン「……教えて。」
怖いけど、ここまで来たんだ、と腹をくくる。
ブリンク「わかりました。」
立ち止まり、静かに息を整え、話始める。
ブリンク「星の戦士とは、マリンさん…あなたの父親のことなのです。そして、私はそのパラレル。彼は手元にいる私の娘と、この私をそれぞれ対応したあなたと彼によって葬ることで、そろって生きて帰ろうとしているのです。」
マリン「……パパ? パパがそんなこと…。」
目を泳がせて、ワンピースの裾をつかんでもじもじとしてしまう。
ミツクビはやさしくその肩を抱く。
ブリンク「彼は、あなたが死んだあと、敗戦した街の地下で、科学研究に没頭したそうです。もちろん、あなたをよみがえらせるために。」
サクリファイス「自分のために死んでしまった罪悪感からか…。」
ブリンク「しかし、作り上げたクローン技術は、生きている細胞を持っていなければ実行することが出来なかったのです。その頃には、あなたの遺体は当然骨だけになってしまっていました。
クローン技術は、後に始まった、セカンドアースによる植民星化侵略計画に対抗する兵士を作り出す兵器として使われることになってしまいました。
彼は、仇なす星に対抗する、彼らの"星の戦士"という、皮肉にみちた名誉を与えられたのです。
死んでしまったあと、紛争の時に勝利したパラレルである私に出会い、あのとき家に逃げ帰ったのがそもそもダメだったのか、と嘆く彼を励ましました。そのころは、お互い仲も良かったのですが、蘇る方法があると聞くや否や、人が変わったようにそれを追い始めたのです。」
サクリファイス「それで、今に至るわけだ。」
ブリンク「ええ…。なので、私は、彼を止めにいかなくてはならないのです。私の娘を救いたいですし、彼が蘇ったところで、きっとまた過ちを犯してしまう。死を受け入れられない人間が、安易に蘇ってはいけないんです。そしてなにより…。」
瞳を閉じて、優しい声になる。
ブリンク「マリンさんに人殺しなど、もうしてほしくないのです。」
マリン「私もッ」
言葉につまりそうになるが、たくさんの言葉が、仲間を繋げているという想いで、言葉を続ける。
マリン「私も、パパを止めたい。」
ブリンク「…では、共に参りましょう。」
マリンの手をとるブリンク。
その手に、さらに二人の手が重なる。
サクリファイス「俺も行くぜ。」
ミツクビ「ミィもいるニャン。」
ブリンク「いいのですか? 巻き込んでしまって。」
驚きはした、だが、それは要らぬ確認だった。
サクリファイス「みずくせぇこと言うなよ。仲間ってそういうもんだろ? 」
ミツクビ「せっかくなら、最後まで付き合うニャン。聞いて放っておくのもモヤモヤだしニャン。」
ブリンク「ふふ、それではいきましょう。最後の戦いへ。」
マリン「いや、戦いにならない方がいいよ…。」
それもそうだな。と、気さくな笑いが起きた。

町に降りると、カインドに居たような優しげな好青年や町娘が出迎えてくれた。
妖精とじゃれあったりしているのどかな風景の中に、本当に星の戦士が居るのか不安になったが、杞憂だった。
ひとつだけ、妖精の寄り付かない家屋があった。
自然と、人さえも遠ざけていて不気味だった。
ブリンク「行きますよ。」
ミツクビ「いつでもオーライ!! ニャン。」
扉を開けると、眼鏡をかけている、痩せこけた白衣の男性が、椅子に腰かけていた。
白いテーブルには冷めかけた紅茶が残っている。
それに手をかけようとしていたところだった。
だが、マリンを見つけるなり、顔がほころんだ。
星の戦士「あぁ…マリン。」
マリン「パパ…。」
マリンは無防備に駆け寄り、彼のそばに寄る。
彼はそんなマリンの頭を、微笑みながら優しく撫でる。
星の戦士「おかえりなさい。」
こうしてみると、単なるほほえましい親子だ。
だが、ブリンクの存在を確認すると、彼の顔から笑いが消えた。
星の戦士「来てくれると思っていたよ。」
ブリンク「そうですか、呼ばれた覚えはありませんがね。」
憶さずに言葉を返す。
星の戦士「では、約束通り、生き返る方法を教えよう。」
サクリファイス「パラレルの存在を消しゃいいんだろ。知ってるぜ。」
星の戦士「!!? なぜ、なぜ知っている? 」
サクリファイス「知っている人間がお前だけじゃなかったって事だよ。」
星の戦士「そうか…。」
彼は、残っていた紅茶を飲み干す。
星の戦士「お前も、生き返りたいと思ったのか? 」
ブリンク「いえ。」
嫌な意味で予想外、という顔でカップをコースターに戻す。
星の戦士「殺されに来てくれたわけでも無いだろう。」
ブリンク「ええ。」
星の戦士は、怒りを噛み殺し、薬指と親指でこめかみを押さえるように眼鏡の位置を直す。
星の戦士「なぜ、邪魔をする。」
ブリンク「あなたは、あなたの幸せしか考えていないからです。」
星の戦士は、カップの置かれているテーブルに拳を叩きつける。
星の戦士「いいや、違う。幼くして死んでしまったマリンのためだ、そして、私はそれを守らなくてはならない。」
ミツクビは腰を低くして戦闘体制に入ろうとするが、サクリファイスは手を突き出してそれをたしなめた。
ブリンク「わからないのですかッ!!? それはあなたの自己満足に過ぎないのです!! 」
星の戦士「そんなことはない!! 」
ミツクビ「なんでそう言い切れるニャン!! マリンに何も訊いてないくせにッ!! 」
星の戦士「…ッ!! 」
星の戦士は立ち上がる。
そんな彼の腕に、マリンは抱きつく。
マリン「やめてパパ…。パパが殺しをしているところなんて、見たくない…。 」
彼は苦しげな顔になる、だが、震える声で返す。
星の戦士「じゃあ、目を閉じていなさい。パパはね、紛争でいくつもの命を亡きものにしていったんだ。あのときにも話しただろう。」
そう言って振り払おうとする彼の腕に、彼女は必死でしがみついた!!
マリン「そんなパパが大嫌いだったから言ってるんでしょ!! 」
それは、勇気を振り絞った魂の叫びだった。
星の戦士「マリン、お前、生き返りたく無いのか? 」
部屋の隅に、不意に大きな筒のような、柱のような者が現れる。
ブリンク「ああ、なんてことを…。」
それは、ファンタジーによくある、人体培養装置だった。
クローン技術を作り上げた彼への皮肉とも思われるその貌。
その中には、ブリンクのパラレルのマリンが入っていた。
星の戦士「ここにお前のパラレルが居る。お前が彼女を殺し、私がその老いぼれを殺せば、二人でまた生きられるんだ…。2度と、2度とこんなチャンスは無いんだぞ…? 」
マリンは、止めどなく溢れる涙をあごから滴らせながら、掴んでいる腕への力を強めた。
マリン「なんで…。なんで生き返ることにそんなにこだわる必要があるのよ…!! 幸せに暮らすだけなら、ここでもいいじゃない!! 」
星の戦士「あ、あぁ…。」
マリン「だから、やめよう。もう、おしまいでいいんだ。ここで休もう…。パパ…。」
星の戦士は膝から崩れ落ちる。
培養装置のアーツは消え、パラレルのマリンは放り出される。
星の戦士「ごめんよ…。パパ、マリンのこと、なにもわかってなかったよ…。勝手なことばかりしてごめんよ…。これからは、いっぱいお前の願いを聞いてあげるから…。」
彼は涙を流し、マリンと抱き合う。
マリン「じゃあ、一緒に暮らそう。みんなで。」
星の戦士「いいよ。好きにしなさい…。」

こうして、この旅の戦いは全て幕を閉じた。
路頭に迷うコッパの手下たちは、彼らにとってはもう、関わりの無いこと。
始まりの日よのうな、穏やかな空、穏やかな風に包まれて、また、もとの穏やかな生活に戻って行く。

町の外れの岩に、「浦々良 麗」の名前を刻んで────────

アフターストーリー 完