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DAI-SONのアレやコレやソレ

創作ライトノベル、「ハーミット」「愚者の弾丸」を掲載。「ハーミット2」連載中。不定期更新です。

「愚者の弾丸」 EX.17 魔列車インビンシブル・クルセイダー

一行は、芸術の街 ホログリフを目指して新たなる旅路についたのだが、
これからはマリンを守りながら進んでいかなければならず、これまでのようにうだうだと珍道中するのはためらわれた。
しかし、車や馬車といった便利なものは持っておらず、手に持っているのは”根性”だけとあっては頭を抱えるのも仕方がないのだった。

手をこまねいていても仕方がないなと足を進めていると、ひとりの人影が見えた。
スーツを着てステッキを持った胡散臭い男だ。
太っていて、スーツはパンパンになっている。
一行は合図も要らぬ間に身構える。
すると、男の後ろに光の筋が走る。
筋はやがて鉄製の鉄道レールの像を成した。
向こう側からは待ってましたとばかりに白銀の列車がやってきた。
列車は丁度男の後方に停まり、ドアを開いた。
中からは、城の修繕のために呼ばれたと思われる大工やら職人やらが出てきた。
男とにこやかに挨拶を交わし、城の方へと向かってゆく。
麗「あれが次の街への交通手段ってわけか。」
サクリファイス「助かったぜ。あれなら外敵に襲われる心配もねぇ・・・。」
警戒を解いて男のもとへ近づく。
ブリンク「すみません、そこの紳士殿。
今の列車は貴方の所有物ですか?」
ステッキ男「えぇ、私のものですよ。」
ブリンク「こちらからも便は出ているのですか?」
ステッキ男「もちろん。行き先はホログリフのみですが。」
ブリンク「失礼ですが、それに私たちが乗ることはできますでしょうか?」
ステッキ男「はっはは、ご遠慮なさらずご利用ください。」
明るい笑顔でこちらの要求をのんでくれた。
ステッキ男「男性3名、女性3名でございますね。それではこちらからお乗りくださいませ。」
男は開いているドアを手で指し示す。
番長(アーツというのはこんなにスケールの大きなものがあるのか・・・。)
出現の仕方から、番長はこの列車を単なるインフラではなくアーツとして認識していた。
当然といえば当然だが、アーツの中に入ると思うとどうも奇妙な気分になる。
列車の中はバスのようになっており、一人づつしか座れないような変わった作りだった。
屋内だというのに、妙に明るいのも特徴だった。
マリンが乗るときに、男が驚いた顔をしたような気がしたが、二度見した時にはなんともなかったので特に気には留めなかった。
みんなそれぞれ乗ったあと、最後に男が乗る。
ステッキ男「それでは、出発致します。身の安全をご確認の上、シートにしっかりと腰掛けてくださいませ。」
列車は静かに動き出す。
ミツクビは窓の外を眺めて遠足気分だ。
ふと、番長は重大なことを見落としていたことに気がついた。
番長「なぁ、オッサン。
なんでさっきは乗ってなかったのに、今は乗り合わせているんだ?
さっき見た感じでは、着いた時に乗っていなかったのだから、自動操縦という印象を受けた。
乗る必要がないはずなのに、なにか乗る理由があるのか?
例えば――――いつもと行き先が違う・・・とか。」
男は言葉に対してニッコリと微笑んで言葉を返した。
ステッキ男「いかにも。事情がかわりましたからね・・・。
ただ、必要なのは――――そこの小娘だけだ。」
眼差しはさっきまでのにこやかなものとは正反対な、冷酷なものになっていた。
男はステッキで床を叩く。
ステッキ男「再編成(リ・セレクト)。」
一同が座っている椅子が一列に並び、その寸後には一人ひとりが壁に阻まれ隔離されてしまった。
最前に座っていた麗だけが男のいる両に取り残された。
ステッキ男「本当は全員閉じ込めて黙らせたいのですが、
このアーツの本来の機能はあくまでも私が不利にならないために1対1の勝ち抜きで戦うためのもの・・・。
私と同じ部屋に一人だけ人を残さなくてはならないルールなのです。
この部屋に小娘を残せば楽なのですが、後ろの方に座らせてしまったために如何せん反撃が恐ろしくて・・・。
まぁ、私はあなたに勝たなくてもいいのです。
”星の戦士”の元に着くまで耐えればいいだけの話ですから。」
麗「舐めやがって・・・畜生、アツい手のひら返しもいいところだぜ。」

分断されたとなりの部屋では、番長が壁に向かって弾丸を打ち込んでいたが、弾丸はズブズブと壁に取り込まれていった。
番長(これは単なる壁じゃねぇ・・・硬いものじゃない”何か”だから衝撃を吸収されちまう・・・。
だからといって側面や床に穴を開けちゃあ外に放り出されておしまいってわけか。
冗談きついなぁ、オイ・・・。)

麗は男に向かって突進した。
この世界での生き方をさんざん見せつけられた彼は、情け容赦なくアーツによる加速で瞬時に詰め寄った。
だが、突き出したその剣は横からの飛来物によってはじかれてしまった。
思わず体ごと持って行かれ、壁に叩きつけられてしまう。
飛んできたものの正体はすぐにわかった。
男の前には座席が転がっていた。
ステッキ男「ふふふ、先手必勝とは慢心が過ぎるのではないですか?」
別の座席が床から外れ、ダウンしている麗に向かって飛んでゆく。
麗は素早く起き上がり、剣によって真っ二つにそれを割った。
しかし、座席は真っ二つになったまま麗に突っ込み、壁に押し付ける形になった。
座席と壁の間に挟まれ、万力にかけられたかのように押しつぶされる。
すぐには出血しないものの、骨という骨が悲鳴を上げ、内蔵はいびつに潰れる。
麗「ガァッ・・・!!」
ステッキ男「安心してください。すぐには殺しませんよ。
このアーツは防御型のアーツ・・・パワーがないですから好きでいたぶっているわけではないのですよ?
それに、生体反応が私だけになったとき、次の部屋に進まなければならなくなってしまいますから私の目的にもそぐいません。」
少しずつ食い込む感覚。今にも壁と一体化してしまいそうなほどに迫る腹と背。
だが、麗は希望を捨ててはいなかった。
希望の光?いや、希望の闇が見えたからだ。
麗は勝利を確信し、風の刃で窓ガラスを割る。
ステッキ男「はっはっは!!何処に向かって打っているのですか?
ヤケクソですかな?」
男はその割れた窓を注視していなかった。
麗の頬は緩む。
音も立てず、穴の空いた窓の外からゆっくりと蔦が入ってくる。
そして、それにしがみついているのは、戦場さえも破壊する橙色の髪の乙女。
番長「よォ。中から来れないから外から来たぜ。
調子はどうだ?オッサン。」
向けられた銃口に青ざめる男。
流石に、座席でのガードでは弾丸のスピードに追いつくことはできないことぐらいは理解していた。
番長「そろそろ次の街だな・・・送ってくれてありがとよ。
切符の代わりにテメーの首をねじ切っておくよ。」
ステッキ男「わーっ!!ご勘弁ください!!なんでもいたしますから!!」
麗を圧迫していた座席は床に落ちる。
ステッキ男「このとおりです!!」
土下座をして命乞いをしてきた。
番長「ふむ・・・改心の余地が有る人間を殺したくはないからな。
とりあえず街についたら安全に停車して降ろしてくれ。」
ステッキ男「はい、承知致しました!!」
列車は街の前で指示通り停車し、一行を降ろした。
麗はブリンクに抱えられて降りる形となった。
麗「すまねぇ・・・情けないな・・・。」
ブリンク「いえいえ、ちゃんと戦ってくれた結果ですから、誰も咎めませんよ。」
街に向かって歩き出す一行。
その後ろで、男は「降ろしてやって油断したところを轢いてやる」と考えていた。
番長「そういえば許してやるって言ってなかったな~私。
あ、もういい頃合だぞ、マリン。」
マリンは小さく頷く。
マリン「”痛いの痛いの飛んで行け”。」
その瞬間に麗の傷は治り、その傷が男へと移った。
男「ぐあぁ!!な・・・ぜ・・・?」
番長「勘違いすんなよ?これはお前がしたことだ。
お前がした仕打ちをそのままお前に返しただけだ。
恨むなら自分の浅はかさを恨みなよ。」
男「おた・・・すけ・・・。」
麗「そうだなぁ・・・送ってもらったお礼に、医者が通りかかってくれることを祈っといてやるよ。」
サクリファイス「こんな奴助けるなんて、まるでどっかの王女様だな!!」
どどうと陽気な笑い声が響き渡った。