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DAI-SONのアレやコレやソレ

創作ライトノベル、「ハーミット」「愚者の弾丸」を掲載。「ハーミット2」連載中。不定期更新です。

「愚者の弾丸」 EX.13 順序と正解

サクリファイス「落ち着いたか?」
泣き止んだ番長の顔を伺う。
サクリファイス「空気を読めねぇようで悪ぃけどよ、ここが敵の本拠地の真っ只中ってことも忘れないでくれよな。」
番長「お前に言われる筋合いはない。」
少し鼻声気味ながらも、しゃんとする彼女の姿は凛とした戦乙女のようであった。

階段前ホール、着いた部屋はそんな印象を持たせた。
城と言う割には殺風景で、そこには一人の青年が待っているだけだった。
部屋も浮いているならその青年も浮いていた。
今まで会ってきた敵は鎧で体を覆っていたが、その青年は余りにも無防備。
ラフな格好に似つかわしくない長槍を携えて座っていた。
青年「おや?番犬はやられてしまったのか。」
幼顔の青年はつまらなさそうにしている。
番長「礼儀として聞くが、お前はどけと言ってどくか?」
青年「どかないためにここにいるんですけど?」
そう言うと、小さなおもちゃのラッパを発現させ、ひと吹きする。
ぷーと間抜けた音が鳴る。
番長は舌打ちをする。
番長「どうせそれでもう術中ってことなんだろ?世話ねぇぜ。」
青年「もう少し驚いてくれたっていいじゃない。
もっとも、驚くのは効果を見てからだけどね。」
態度は挑発的なものの、物腰柔らかく冷静。
虎視眈々とチャンスを狙っているふうだ。
サクリファイス「ふん、奴は槍を持っているんだ。
最終的には武器での一騎打ちになるに決まってる。
たかが小細工をかけた程度で三人まとめて相手出来ようってんならまずはその鼻っ柱をへし折ってやるぜ。」
千代「にらみ合ってたってしょうがないもんね・・・。」
そう言った千代の背後から黒い影が這い出る。
黄色い血走った眼球、黄土色のチェストプレート、赤いマフラー、白い顎当ての穴からは緑色の光がほんのりと見える。
これが千代と共にある「決意」のアーツであり、息を潜め戦いの時を待つ”隠者”の像、”クロ”だ。
風貌は獰猛で頑固な、いかにもチカラの塊といった印象を受けるが、
その像は人格を持っており仲間思いで情熱家、激情に動かされることもありながらも知的で優しい千代の内面を絵に書いたようにうつしている。
クロ「怪しい現象を見たらすぐに引くんだぞ?いいな?」
千代「わかってる。」
番長もそれに同調して、遅ればせながら銃を構える。
青年「へぇ~、三対一かと思ったら四対一なんだ。
どっちでも同じことだけど。」
武器を構えられているにも関わらずぶらぶらとして平然とした態度を取っている。
サクリファイス「その余裕ヅラを歪めてやるよ!!」
床を蹴って飛び出す。
一向に動じない青年に向かって鎌の光が閃く。
――――はずだった。
が、サクリファイスは振る直前の姿勢で停止してしまっている。
いや、停止というよりは固定といった方が正しい。
サクリファイス「うご・・・けねぇ・・・?」
青年「無理しないほうがいいよ?体中やけどだらけじゃん。」
千代「近づきすぎたら止まるのかな・・・?」
千代は墨汁の入った瓶を取り出す。
これは”クロ”が黒い部分から発現するという特異な性質を生かした立派な武器だ。
千代はおおきく振りかぶって投げようとするが、投げる直前で固定されてしまう。
青年「ざんね~ん。その発想はハズレ。」
千代「そうだね。
でも、もうからくりはわかったよ!!」
サクリファイス「マジか!!?一体どうなってんだッ!!?」
クロ「このアーツは”自分に攻撃しようとしてきた敵を攻撃手前で固定する”能力を持っているんだ。」
青年「ふふふ・・・よく出来ました。80点をあげよう。」
番長「残り20点は倒せてからってか?」
青年「違うよ。解除条件を当てていない。
君にはわかるかな?もっとも、見ていればいずれわかるだろうけど。」
番長「わかんなくても倒しゃあいいんだよ。」
だが、番長は引き金を引く直前で固定されてしまう。
青年「かかってみたら分かるとでも思ったのかな?しかし、本当にわかってしまうのが残念だ!!」
槍をサクリファイスの心臓めがけて突き立てる。
番長「・・・・・・。」
だが、槍は肌の表面だけを削ってそれてしまう。
青年「・・・・・・?」
サクリファイス「へへっ、ホントはやりたか無かったぜこんなこと。」
彼は心臓部分の血液を硬質化させて心臓を守ったのだ。
サクリファイス「これをやると、血の巡りが悪くなってフラフラするんだよ・・・クソ・・・。」
そう言うとともに銃声が鳴り、瓶は投げられる。
サクリファイスはよろめき後退する。
番長「ふーん・・・。」
唸る彼女にはすでに勝利が見えていた。
直後、何を思ったか彼女は青年の方に駆けて、殴りを入れようとするポーズで固定される。
青年「どうしたんだい?ヤケクソかな?」
千代「いいや、番長ちゃんがただであんなことをするはずがない・・・きっと裏があるはずだ!!」
体を固定された番長はニヤリと笑う。
番長「お前の答え合わせに、120点の回答をやろう。」
青年「大人しくやられるって意味かな?」
番長「そう――――お前がな。」
青年「知ってるか?寝言は寝てから言うから寝言なんだよ!!」
槍を突き立てる青年であったが、青年もまた固定されてしまう。
青年「・・・は?」
動揺し、目を丸くする。
番長「そんじゃあ、落ち着いたところで答え合わせといこうじゃないか。
お前の能力の正体は、”攻撃の順番決めをする”ことにある。
お前自身が再優先順位を持っているから、ルール違反のみんなの動きが止まっちまうんだ。
だからこの固定は、お前のサクリファイスへの攻撃によって解けた。
それで解ったんだよ。」
青年「まて、それはあっているんだが、それだと何故僕が僕自身の術にかかっているんだ!!?」
番長「せっかちなやつだぜ。
いいか?こっからが残りの20点分のゲインだ。
お前が次に攻撃するには、相手の攻撃が終わってからじゃないといけない。」
青年「つまり・・・?」
番長「私の”一回目の攻撃”はまだ終わっていないんだよ。」
番長の撃った弾丸は壁を貫かず、表面でめちゃくちゃの螺旋を描いて倒れそうなベーゴマのように暴れている。
番長「ところでお前、銃弾がはじかれたとき、どうなるかわかるか?
跳弾っつってな、スゲー勢いでとばっちりを食らうやつが現れるんだってよ。」
青年「・・・それって・・・僕?」
次の瞬間、弾丸は壁を蹴って青年の頭にめり込み、ねじ切った。

そこに、手袋をかぶったくぐもった拍手が聞こえる。
???「ブラボー!!ブラボーッ!!」
階段の上から、シルクハットをかぶった胡散臭い男が降りてきた。
漫画やらに出てくるマジシャン像そのものだった。
サクリファイス「なんだテメェ。」
喧嘩腰で睨みつける。
マジシャン?「いやぁ、王を楽しませるために、ちょっとした余興をやろうと思いましてね。」
付け髭のようなちょび髭を伸ばしてピンと跳ねさせる。
サクリファイス「わりぃがふざけてる場合じゃあないんだ。どいてくれ。」
マジシャン?「おやおや気が立っているジェントルメン?あなた傷だらけじゃないですか。
芸人であり道化である私のアーツは、”丸バツクイズ”のアーツ。
私の出題する問題に三回連続で正解するともれなく!!傷を癒してあげますよ~。」
千代「そうやって手玉に取って騙すつもりなのね?」
怪しさ満点の男に向かって怪訝な視線が向かう。
そんな目を向けるな、と言わんばかりに男はため息をつく。
マジシャン?「・・・では、はっきりと申し上げましょう。
手負いのあなたたちでは王には勝てません。
どうぞ、余興をお楽しみにならないのならばお引き取りください。
それが懸命でございます。」
番長「随分な自信じゃないか。」
マジシャン?「いいえ、これは自信ではありません、評価であり事実です。
無傷でも近づくことさえ難しい。
それを手負いで向かおうなどとは無礼千万!!
王は楽しく生きたいとおっしゃる。
だから、せいぜい足掻けるようにわざわざお膳立てをしようというのです。」
サクリファイス「余計なお世話だ!!」
マジシャン?「強情は張らない方が身の為ですよ。
ジェントルメンだけでなく、レディの方々も。」
サクリファイス「・・・いいだろう。嘘をついていたらすぐにぶちのめしてやる。」
クロ「おい、安易に乗るんじゃない!!きっと罠だ!!」
男は指をチッチッチ、と振る。
マジシャン?「クイズは一対一だ。そこのジェントルメンが受けたのだから外野は静かにしていたまえ。
問題が聞き取れなかったら取り返しがつきませんよ?」
番長「乗ってしまったものはしょうがない・・・正解してやればいいだけだ。」
サクリファイス「あったりめぇだ!!」
マジシャン?「では行きますよ?
おっと、申し遅れましたが私、名前をマーロゥといいます。
今後ともお見知りおきを。」
サクリファイス「ケッ、墓には名前くらい刻んどいてやるぜ。」
マーロゥ「それでは第一問!!私は口の中に生き物を飼っている・・・マルかバツか!!
・・・イエスやノーでも構いませんよ?」
サクリファイス「はぁ?そんなのバツに決まってんだろう。」
マーロゥ「ご名答!!微生物はいますがこれは飼っているとは言えません。いるだけです。」
サクリファイス「なめやがって・・・!!」
マーロゥ「おっと、まだ二問ありますから、ゆめゆめ油断はなさらぬよう・・・。
それでは第二問!!私は今シルクハットの中に生き物を飼っている・・・マルかバツか!!」
サクリファイス「マルだ。マジシャンなんだから白い鳩を飼っているだろ?」
マーロゥ「OH!!そこまで言い当てられてしまうとは面目ない。ご名答!!
・・・マジシャンだとは一言も言っていませんけどね。
ほ~らクックちゃん、ウンチは後でしてね~。
・・・それでは運命の第三問!!私は帽子以外の服の中にも生き物を飼っている・・・マルかバツか!!」
サクリファイス「ベストの中に生き物なんて飼えるか!!バツだ!!」
マーロゥ「・・・・・・。」
嫌な静けさが流れる。
冷や汗が頬を伝う。
マーロゥ「Booooooooooooo!!残念!!ハズレ~。」
服の中に何やらもそもそと動き回る出っ張りがある。
マーロゥ「紹介しましょう、ハムスターのドリーちゃんです。
ほ~らご挨拶しなさ~い・・・ん、いい子いい子。さっきまで大人しくポッケに入っていたんですよ。お利口さんでしょ?」
指先でハムスターを器用にあやしている。
マーロゥ「それでは!!恒例の”罰ゲーム”に移りましょう!!」
サクリファイス「は・・・?」
マーロゥ「いいことには必ずリスクが伴うのです。
いやぁ~、いい教訓になりましたなぁ・・・。
GAMEOVER!!”クイズくん人形”におなりなさい!!」
サクリファイス「ちょ、ま――――」
言い返す前に、サクリファイスはファンシーな煙に包まれて不細工な道化の人形になってしまった。
そして、マーロゥの手元へと浮いて飛んでゆく。
千代「たぁ~・・・言わんこっちゃない・・・。
やっぱり最初っから人質に取ろうとしてたのね。」
マーロゥ「そんな人質なんて人聞きが悪い。
彼はゲームに負けたのです。それだけです。
どうです?奪還クイズに挑みますかね?」
千代「当然よ!!仲間を取られたままじゃ進めない!!」
マーロゥ「GOOD!!」
クロ「おい、相手のペースに飲まれているぞ。いいのか!!?」
千代「だからって放っておけないよ・・・。」
番長「・・・・・・。」
番長は無言で手招きする。
千代「・・・なに?」
番長は千代の耳元に口を寄せる。
そして、耳たぶを甘噛みした。
千代「ウヒャ、イヒヒ、くすぐった~い・・・ってやらすな!!摩利華ちゃんじゃないんだから・・・。」
番長「ジョークだジョーク。緊張すんなってことだ。」
再び耳元に口を寄せて呟く。
番長「いいか?問題は三問あるが、一問目、二問目は接待だ。
相手をつけあがらせるために簡単にしている。
そうやって”勝てる”と思わせるのが相手の手口だ・・・。
判断を誤るなよ?」
マーロゥ「ウォッホン、そこのレディたち?仲良しは良いですが、
クイズが始まれば一対一・・・アドバイスや代理回答はNGでございますので悪しからず。」
千代「わかった・・・じゃあ始めて。」
マーロゥ「OK!!ゲームを始めましょう!!」