DAI-SONのアレやコレやソレ

創作ライトノベル、「ハーミット」「愚者の弾丸」「ハーミット2」を掲載。更新停止中です。

「愚者の弾丸」 EX.0 誰が為に死に賭し墜ちる者

3018年 某日・・・

ボディスーツの男「さぁ、どうする?」
膠着状態になった場面、問いかける男は余裕綽々だった。
番長は過去を改変し、タイムマシンによって元の時代に戻った。
だが、彼も番長が到着する直前を狙い、予備のタイムマシンで追ってきたのである。
帰還の喜びに浸るまでもなく、仲間は組織により人質に取られていた。
ヒロ「構わず殺せ!!どうせお前が犠牲になっても俺たちは助からない!!」
電子「元より三度この大地を踏みしめることのなかった命・・・再び世界に立たせてくれたお前のために死ねるのなら本望だ!!」
井怨「いずれなくなる命と・・・永遠の命・・・天秤にかけるな・・・。考えなくてもわかるだろう・・・。」
ボディスーツの男「安心しろ、お前が自害すれば本当に助けてやる。
主格のお前さえいなければ、こいつらだってただのそのへんの技術者集団とどんぐりの背比べだ。
我々に敵うのはお前だけなんだよ。」
番長は手をかざし能力を放たんとする。
だが――――
ボディスーツの男「馬鹿めが!!どうして俺が無謀にも人質などという手段をとったと思うか?
呪いが解けた直後の腕がナマっているこのタイミング・・・たった今のお前なら、稚拙な施設でも能力の行使を妨害できる!!」
周りにはリュックを背負っている奴らが居る。
おそらく、こいつらが妨害を仕掛けているのだろう。
ボディスーツの男「お前の能力は、お前自身を殺めるために使え。」
番長「・・・・・・・・・。」
シルフィ「判断をあやまらないで・・・。」
陽子「見殺しにされたなんて言わないから・・・生きて・・・!!」
仲間は彼女を心から信頼し、尊敬し、愛していた。
だからこそ――――
番長「そんなお前らを犠牲にしてまで私に生き延びろというのか!!
こんな命と引き換えに助かるなら、自分なんて要らない――――!!」
ヒロ「やめ――――――」
彼女の首は吹き飛んだ。
彼女の優しさは、自らを滅ぼした・・・。

・・・・・・・・・・・・
ひどく臭い匂いだ。
吐きそうだ。
本当に大変な匂いだ!!腐っている!!
思わず目を覚ます。
目を覚ます?それはおかしいな。
私はさっき死んだはずだが・・・・・・。
しかも、この場所は知らない。
自分が住んでいたオールドマシーナリータウンのどこにもこんな場所はなかった。
目に見えるのはレンガで出来た家、タイル。
私が住んでいたのはコンクリ固めの冷たい街なのに・・・。
体が逆さまだったので、ゴミ袋の山から起き上がり、体制を立て直す。
しばらくゴミの上に横たわっていたせいか、体にも匂いが移っている気がする。
???「あの~、お嬢さん?」
中性的な雰囲気を持つ男が顔をのぞかせてくる。
???「ゴミ漁りですか?」
番長「違うわ!!」
男は腕組みをする。
しばし考えたあと。ピンときたようだ。
???「なるほど。君は死んだのか。
ようこそ、”死後の世界”に。」
なんだろうか。
コイツは正気なのだろうか?
妄想電波か?
番長「お前が介抱してくれたんじゃないのか?」
???「どうやって考えたらそう思うんだよ・・・。
助けていたのならゴミ捨て場になんて放らない。
それとも、死んだ自覚がないのか?」
番長「いいや、あるよ。」
???「とりあえず、住む場所を町のどこにするか検討するよ。
俺の名前は浦々良麗(ウラララウララ)って言うんだ。
この町の自警団団長を勤めている。
困ったことがあったらいつでも相談しな。
集会所まで付いてこい。異世界に突然放り込まれちゃあアテもないだろう。」

集会所・・・と言ってもただの酒場だった。
なんだ私は、RPGの世界にでも来たのだろうか?
麗「ま、自警団・・・とは言うけど団員は俺を含めて三人だけ。
この町は平和だからね。頭数が必要じゃないんだ。」
???「ん?お前が女を連れてくるなんて珍しいじゃないか。」
麗「バーカ、ナンパじゃねぇよ。彼女はさっき死に落とされたのさ。」
そうか、”死後の世界”だから、”産み落とされた”とかではなく”死に落とされた”という表現なのか。
めんどくさいな。
麗「紹介しよう、右の男がサクリファイス・フォスター。
んで、左の猫耳が特徴の女の子は、ミツクビ。俺たちはニャンコって呼んでる。」
ミツクビ「よろしくニャン!!」
番長「キャラ作りしているタイプか。」
麗「いや、ニャンコは生前化け猫だったそうだ。耳とか尻尾は引っ張っても取れないぞ。
この世界では魂のあるものはみな人型になるんだ。」
よく見ると尻尾は二本生えていて、耳は猫のものだけで人間のものはなかった。
かといって体毛が生えているわけではないから獣人といったイメージは受けない。
サクリファイス「可愛いだろ?俺たち付き合ってるんだよ。」
ミツクビ「ニャァ・・・ダーリンったらぁ・・・。」
番長「イチャつくのはいいけどないがしろにはしないでくれ。」
麗「そうだな。まずこの世界の説明が必要だな。」
サクリファイス「まぁ、座れよ。落ち着いて話そうじゃないか。」
番長と麗は席に着く。
麗「じゃ、長くなりすぎないように簡単に説明するぞ。
まず、ここは天国みたいな場所だ。
食事は妖精に用意してもらえる。極楽浄土な。
怪我をしても医者にクリスタルを使ってもらえば簡単に治せる。
ただ、死んでいるのだから新たな生命の営みは存在しない。
自然は世界の生命力によってできていて、種からは植物が生えないし卵からはひよこは生まれない。」
番長「ん・・・?天国みたいな場所で、かつ平和なんだよな。
なら、自警団自体必要ないんじゃないのか?」
ミツクビ「いい質問だニャン。ご近所トラブルなら組織を用意するまでいかなくてもいいと思ったんニャよね。
この世界にあるひとつのルールのために、この世界ではただ唯一他人という存在だけから自らを守らなければならないニャン。
それ以外の動植物は基本的にこちらが黙っていれば何もしてこないニャン。」
サクリファイス「んで、そのルールっていうのは、”この世界で100人殺せば生き返ることができる”っていう奇妙なルールなんだ。」
麗「そのルールのせいで、自警団が必要になってくるんだ。」
番長「実際生き返った奴はいるのか?」
ミツクビ「問題はそこにはないニャン。
問題なのは、それの真偽を問わずそのルールを信じた人間が他人を襲い、殺すことニャン。」
番長「問題になっているかなんて聞いていない。生き返った人間がいるか聞いているんだ。」
麗「・・・?まさか、本当だとしたら・・・。」
番長「察しがいいな。生き返るチャンスがあるのならば、それを逃すなんてありえない話だ。
ただ、私だって人間だから無差別に殺したりはしないさ。」
麗「それは自分のためか?」
番長「は?」
麗「100人を殺してでも生き返りたいのか?それが自分のためなら、お前はここで始末する。」
番長「・・・自分のためだろうな・・・仲間のために命を投げ打って、
でも生き返れるのなら助けたいとか言い出して人殺しになるなんて、お前たちにとってはワガママなエゴにしか聞こえないだろう?」
麗「エゴイズムだと解っているのなら生き返るかどうか考え直してみるんだな。」