DAI-SONのアレやコレやソレ

創作ライトノベル、「ハーミット」「愚者の弾丸」「ハーミット2」を掲載。更新停止中です。

「ハーミット」 ACT.29 喧嘩両成敗

昼過ぎには潮の自宅に到着していた。
マンションの一室に住んでいるようだ。
千代「潮ちゃん、起きられる?」
潮「う・・・ん・・・なんだ、もう着いたのか。・・・っつうか真夏に分厚いタイツなんて履いてんじゃねぇよ、汗クセぇぞ。」
摩利華「そこがいいんじゃない!!」
潮「えっ。」
枷檻「気にするな。平常運転だ。」
バタバタと車を降りる。
が、潮は空元気は口だけで、足元がおぼつかない。
枷檻「ったく・・・おら塩、肩貸せ。」
潮「ったぁ~畜生後輩に貸しを作るなんて・・・悔しぃ~!!」
枷檻「いいからとっとと掴まれ、お前にはちゃんとリタイアしてもらわないと困るんだ。」
潮「あれ、もしかして、お前いい奴?なんだかんだ言って一番協力的なような・・・。」
千代「そうだよ、枷檻ちゃんはいい人だよ!!」
摩利華「言葉は荒っぽいですが、まっすぐな心を持った方ですわ。」
枷檻「バッキャロ!!うるせぇんだよ!!褒めたって何も出ねぇかんな!!」
潮「ツンデレかぁ・・・株が上がったな・・・。」

枷檻「うっわナニコレ・・・。」
部屋にはケント紙や原稿用紙、資料や教科書などが散乱していて、足の踏み場もない。
摩利華「不潔な生活を体現した姿ですわね・・・。」
千代「ちゃんとお風呂入ってる?」
潮「入ってるわよ!!・・・二日に一回。」
枷檻「マジで?担がなきゃよかった・・・。」
摩利華「女性としてどうなんですの?」
千代「よくそれで他人の体臭指摘できるよね・・・。」
潮「毎日風呂なんか入ってるとコミケに出す原稿間に合わねぇんだよ!!文句あっか!!」
枷檻「・・・で、この中を探すと・・・。」
一同は思ったよりも重労働だという現実を突きつけられ、早くもげんなりした。
潮「ウチも探すよ・・・。」
枷檻「バッキャロゥ、死にそうな顔してんのに動き回るんじゃねぇ。
マジで死なれたら洒落にならねぇぞ。
私はくたばったやつの謝罪は聞かねぇって決めてんだよ。」
千代「それじゃ、探そ!!」
摩利華「はぁ・・・汚いとか臭いとか言っていられませんわね。」
煩雑に散らかっている紙の中を探る。
摩利華「きゃあっ!!」
枷檻「なんだ?虫でもいたか?」
摩利華「ち、ちち、違いますわ!!こ、こんな破廉恥な絵が・・・。」
枷檻「ちょっ、持ってくんなって!!」
千代「原稿がどうとか言ってたけど・・・まさかエロ同人描いてるなんて・・・。」
潮「需要があるから供給してんのよ!!悪い??」
摩利華「確かに言わんとしていることはわかりますが、事前に言って欲しいものですわ!!」
枷檻「そ、それで、これは・・・使うのか?」
潮「それは・・・捨てていいわ。インクが散っちゃった奴だから。ほらここ。」
摩利華「ほらここ。ではありませんわ!!
仮にあなたの中で失敗した絵だとしても、男女が行為に至っているシーンの描写ですのよ!!
おいそれ見てみてと言われて見るものではありませんわ!!」
摩利華は原稿をくしゃくしゃと丸める。
潮「なんだよいい子ぶっちゃって・・・。
あ、そうそう大体”ですわちゃん”がさわっているあたりは大体エロ同人の原稿だから気をつけてな。
端っこにちゃんと積み上げてあるやつが成功してる奴だから崩さないように。」
摩利華「”ですわちゃん”だなんて失礼ですわね。
私には亜万宮摩利華という立派な名前がありましてよ。」
潮「そっちから自己紹介されてないんだからしょうがないだろ。」
千代「そういえば・・・そうだね。私は藤原千代、そして肩を貸してくれたのが小鳥遊枷檻ちゃん。」
潮「そう・・・って小鳥遊!!?あの小鳥遊財閥グループの?まっさかぁ・・・。」
千代「残念だけどそのまっさかぁなんだよね・・・。」
潮「マジかよ超お嬢様じゃねぇか・・・。ってことは千代も?」
千代「ううん、私はごく普通の一般家庭の人間です・・・絶賛ローン返済中・・・。」
潮「なんでこんな不釣合いな三人がつるんでるんだ?」
千代&枷檻&摩利華「自分の住む街と巻き込まれてしまった一般人をを守りたいという気持ちは同じだから。」
摩利華「あら~、言葉が重なってしまいましたわね。」
潮「そっか・・・この戦いって、それだけのレベルの強い意志が無いとやっていけないものだったんだな。
どうりでウチは食い尽くされるわけだよ。
漫画のネタになるな、メモっとこ。」
千代「・・・ん!!あった~!!」
枷檻「早ぇよ!!」
潮「よかった~・・・本当にありがとう・・・。」
潮はペンでルールシートにサインをする。
すると、頭からうさみみが消えていった。
潮「ん?お?なんか元気になってきた!!」
千代「能力が吸っていた生命力が還元されたのかな?能力使ってなかったでしょ?」
潮「あぁ。なんだかんだで戦いにはならなかったしな。
しかし、なんてお礼したらいいかわかんねぇよ・・・。」
千代「お礼なんていいよ。
強いて言うなら、戦いが終わったらこっちの町にまたおいでよ!!」
潮「露骨な死亡フラグやめぇ。」
千代「私が歩く生存フラグになってみせるから心配しないで。」
摩利華「”ふらぐ”って何の事ですの?」
枷檻「さぁな。」

潮「あばよぉ~!!今日が今生の別れにならねぇように気をつけろよ~!!」
最凝町帰る車に向かってロクでもない別れゼリフを吐いてきた。
だが、あれが彼女の精一杯の応援なのだろう。

大柄な男は今日も飢えた狼のように五感の全てを機敏にして能力者を探していた。
もはや怪我など気にしている場合などではなかった。
”バイパスの狂気”によって”戦闘”が”殺戮”に変わってしまったこの現状をなんとか食い止めねばならないと必死になっていた。
事件が起きてからというものの、能力者が人に危害を加えることについての感傷が麻痺してきている。
一人殺傷してしまうだけでもおおごとなのにも関わらず、マスコミは怖いもの見たさで盛り上がっている。
そんな彼と出くわしたのは目的としていた紫色の髪の少女でも暴走能力者でもなかった。
ニット帽の青年「ん?なんだお前、そんな険しい顔をしてよ。」
大柄な男「この辺りで起きている連続殺人、何か不自然だと思ってな。」
ニット帽の青年「そう、俺さぁこの子探してるんだけど、知らない?」
差し出されたのは例の紫色の髪の少女の写真であった。
大柄な男「!!」
男は咄嗟に能力のスーツを身にまとう。
ニット帽の青年「やはりな!!不自然だと思ったぜ!!」
指で鉄球爆弾を弾き、振りかぶった右手を爆風でグラつかせる。
タイミングを逃した拳はバックステップした青年の前を空振る。
青年は距離をとりながら容赦なく次の鉄球爆弾を弾く。
男はそれを殴り、能力による拳圧で爆風を抑えるが、拳の部分のスーツが少しずつ擦り切れていく。
大柄な男(長くは持たないか・・・なら!!)
男は隙を見てスーツの内部から何かを取り出し、目の前でそれを殴り飛ばす。
ニット帽の青年「その程度の射撃なら!!」
しかし、拳によって弾かれたのは”お手玉”。
中に入っていた小豆が飛び出す。
そして、そのひと粒ひと粒を能力の拳が追いかける。
ニット帽の青年(そうか!!コイツの能力は、”殴ったものをさらに殴り続ける能力”!!
すなわち、ひとふりで大量の小豆に能力を付加させ、軽いために飛んでゆく小豆を拳は追いかける!!
これは、物体の射撃ではなく、近距離の能力を無理矢理遠距離に当てるための射撃だ!!)
大柄な男「この技には弾数制限があるからな・・・あまり使いたくはなかったのだが。」
青年はラッシュを食らって吹き飛ぶ。
ニット帽の青年「て・・・めぇ・・・マジで・・・あったまきたぜ・・・!!」
ボロボロになりながらもまだ気絶はしていないようだ。
大柄な男(遠距離な分威力が小さくなってしまったか・・・。)
ニット帽の青年「これでも喰らえ!!」
青年は鉄パイプを取り出すなり、何かを発射した。
ピンポン玉だ。
鉄パイプの中で弱い爆発を起こし、鉄球爆弾を詰め込んだピンポン玉を打ち出したのだ。
言うならば、小さな榴弾砲である。
男も、仕留めきれていないことを予測していて、ブロック塀をひとつ抜き出し拳圧によって射撃していた。
互いに打ち出した二つの弾丸。
それは互の頭部に命中し、同士打ちの結果をもたらした。
男は能力スーツのおかげで頭が消し飛ぶことはなかったが、振動による脳震盪で気絶。
青年もブロックを頭に食らったのだから、言うまでもなく気絶した。
歯向かう”力”には平等な”審判”を下し、決すべき”審判”は豪快なる”力”の前に屈した。