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DAI-SONのアレやコレやソレ

創作ライトノベル、「ハーミット」「愚者の弾丸」を掲載。「ハーミット2」連載中。不定期更新です。

「ハーミット」 ACT.18 叛逆の牙は引き合う戦意を連ねる

枷檻の父親「すまないが協力はできない・・・。これは私が抱える人間たちが多すぎるが故なんだ。
本当に申し訳ないが理解してくれ。」
摩利華の家の人々ように協力を仰ごうと考えたりはしたのだが、小鳥遊財閥は邸内のみならず会社やグループが存在しており、
これだけたくさんの人間がいてしまうと、もしその中に能力者が紛れ込んでいたらという可能性を孕んでしまうために、逆にダメになってしまうのだ。
たとえそれを危惧して少数精鋭のグループを作ったりなどしたら、財閥内の不安や反感を買ってしまう。
そのためにできることはごくごく限られてしまい、何もできないも同然なのだ。
枷檻の父親「金銭的な支援ならある程度はできる。
私の親バカもいいところな愚妻が、わざわざ枷檻用の口座を作って毎月納金しているんだ。
もちろん、しっかり与えていると嘘を吐いて差し押さえていたがな。
今、キャッシュカードと暗証番号を手配しておこう。有用なことに使うんだぞ。」
枷檻「サンキュー、オヤジ。」
巨大な組織があるにも関わらず、協力を仰げないのは惜しいことではあったが事情が伝わったことでこれからの行動は自由になった。
枷檻「なんか、オヤジに頼んのはいい気はしねぇけどよ、バイトしなくても良くなって休めるっていう安心感と、努力をしなくなった虚無感があるな。」
摩利華「これからは学生の本業である勉学に励めばいいのよ。」
トイレから戻ってきた千代をベッドに迎えながら、悪戯げに微笑んだ。

8月4日(土曜日)

千代はまた夢を見ていた。
以前と同じようなものだが、前よりも少しモヤは薄い。
違いがあるとするならば、視点が番長自身の視線になっているということだ。
子供のように振舞う人影。
クールに振舞う長身の人影。
間抜けにおどけている人影。
親のように暖かく見守る人影。
そして、最後の人影は・・・
???「無事に・・・って・・・して・・・。」
はっきりとは聞こえない。
でも、声色から心から心配する男性だということは解る。
番長は優しくふふと笑い声を漏らし、彼とキスをする――――

千代「はわ~~~~~~~~~~ッ!!」
突如として訪れたキスシーンにおどろき、赤面して大声を上げて勢いよく体を起こす。
摩利華「ひゃんッ!!なんですの?」
となりで”普通に”就寝していた摩利華は、共有していた布団がめくられて目を覚ます。
千代「はへ・・・夢・・・。」
キスシーンだけが脳裏に焼き付いていて離れない。
千代「私に彼氏ができるはずないもんね~。」
キスシーンの印象が強すぎて、いきさつの記憶が飛んでいた。
もとよりはっきりしていなかったのでいきさつがあったことすら忘れてしまっていた。
摩利華「びっくりしましたわ。
てっきり侵入者が入ってきたのかと・・・。」
眠い目をこすっていると、千代のスマホに着信が入った。
番長からの電話だった。

番長「大変だ。」
これまたひどく焦った様子だ。
千代「落ち着いて。ひとつづつ話して。」
番長「お、おう。わかった。
・・・あのな、この町でお前以外の戦闘が発生したんだ。」
千代「!!?」
番長「私は、ここ最近の”胡散臭い話”を集めていたんだ。
そして、そのひとつの事案が気になったもので深く探ってみたんだが、入院中の本人を当たることができたんだ。・・・もちろん負けたほうな。
そいつは私たちと同年代ほどの女性だったんだが、アルカナバトルのことについてほのめかしたらあっさりと話をしてくれた。
『私は”節制”の能力を持っていて強力な能力の前に敗れてしまった』・・・と。」
千代「じゃあ、その相手の能力がわかった・・・ってこと?」
番長「そうだ。相手の能力は、”無数の拳”だ。
千代のようなラッシュ攻撃に近いんだが、その拳が強力な上にこっちのことを追いかけてくるそうなんだ。」
千代「えぇ!!?かわし様がないじゃん!!」
番長「追いかけ方がどういう法則で成り立っているかはわかりかねるが、以前と違って戦闘のヒントがハッキリとしている。
それに正統派武闘能力が故に、こっちからの知略が試されるぞ。」
千代「法則性を見出すのが重要か・・・。いつもありがとうね。」
番長「あ、あと、見た目がかなり特徴的で、海外ボクサーのような巨大な筋骨隆々の男だそうだ。
大柄な男には気をつけろ。」
千代「オッケー。番長ちゃんも、たまには休んでね。」
番長「何言ってんだ、お前みたいにスタミナのないへたれじゃあない。
お前こそ、たまには息抜きをして精神の疲れをとるんだな。」

大柄な男は入院していた”節制の女”のもとへ訪れた。
節制の女「あら、今更なんのようかしら?私はもう無関係のはずよ?賠償金ももらえたし・・・恨んではいないわ。」
大柄な男「ふん。”事故の第一発見者”としての見舞いだ。」
節制の女「あら、そう。」
節制の女は読んでいたハードカバーの詩集に視線を戻す。
大柄な男「もう少し根に持つと思ったのだがな。」
無機質な問いかけに答えることもなく、女は詩集のページを繰る。
そして、答えではない言葉を唇から外に出す。
節制の女「”節制”・・・正位置の意味は節度と献身・・・哀れ私のためにはなってくれなかったわ。」
大柄な男「献身・・・か、私のためにはなったぞ。」
男からの皮肉に対して女はふふふと不気味に微笑む。
節制の女「どうして憎まれてるのではないかと考えるのに、あなたは自分に正位置が向いてくれると思うの?
逆位置は浪費、生活の乱れ、不摂生・・・これからは思い通りには行かないと思うわよ?」
大柄な男「どういう意味だ?」
節制の女「まだわからないの?本当に感性が貧相なのね。少し本を嗜んだらいかが?
私はあなたへの恨みがなかったわけじゃないわ。
でも恨みはもう過去形なのよ。
”もうそれを解消してせいせいしている”・・・ってだけよ。」
大柄な男「・・・!!」
節制の女「ようやくわかったようね。」
大柄な男「クソアマがッ!!妙な真似を!!」
節制の女「あらあら、あなた強い相手と戦いたいんでしょう?強敵を用意してあげて何がいけないの?」
大柄な男「それでは戦いがフェアではない!!相手の情報を教えろ!!」
節制の女「残念・・・私のところに来たのは”能力者の協力者”を名乗る女性よ。本当よ。
それ以上は知らないし、私は話した時点ですっきりしちゃったから聞くつもりもなかったわ。」
大柄な男「化け猫と言っても女狐といっても足らぬ小汚い女め、貴様の与えた試練など優に乗り越えて見せてやる。」
男は怒りに満ち満ちた顔で病室を後にした。
節制の女「あれだけ優秀な人間を味方につけている能力者・・・一筋縄でいくかしら?」
ご機嫌な様子で女はまたページを繰った。