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DAI-SONのアレやコレやソレ

創作ライトノベル、「ハーミット」「愚者の弾丸」を掲載。「ハーミット2」連載中。不定期更新です。

「ハーミット」 ACT.13 波立つ情

番長『向かうのは夕方ころになる。』
LINEにメッセージを返された。
枷檻「アイツいっつも夕方にしか来ねぇよな。」
三人は長いテーブルの片隅に腰掛け、料理を待っていた。
摩利華「彼女にも彼女自身の都合があるのでしょう。仕方ありませんわ。」
千代「でも、せっかく振るってもらった料理が冷めちゃうよ・・・もったいないね。」
枷檻「こういうもんは早い者勝ちってもんだよ。」
摩利華「大丈夫ですわ。シェフや使用人には彼女が遅れることは通達済みですので、彼女の分は到着してから作れるようにしてありますわ。」
千代「そう・・・よかった。」
摩利華「ところで、番長さんは何者なんですの?うちの学校の先輩ではなさそうですわ。」
千代「知り合いが能力者になって戦っているんだけど、番長ちゃんは誰かにその人を止めて欲しいんだって。
私に戦闘経験を積ませて確実にその人を止められるように、戦いの都度協力してくれるんだよ。
必死すぎて時々怖いけどね。」
枷檻「変な話だよな。会った時に直接潰しに向かわせても良かったのに、なんでこんな回りくどいことすんだろ。」
摩利華「きっと、あまりの力を目の前にしてその知り合いさんがリタイアしてくれることをもっとも望んでいるのではなくて?」
千代「そうだよ。少しでも人が傷つかない結果を望んでいるんだよ。
それよりも私は枷檻ちゃんの正体の方が気になるんだけど・・・。」
摩利華「気になりますの?見れば解るではありませんか。」
枷檻「そうだな・・・そろそろバレてると思ってた頃だし、隠し事も良くないな。」
千代「???」
枷檻「お前・・・まさか解らないのか?」
千代は苦笑いを返す。
枷檻「はぁ~・・・ってことは私のことはただの喧嘩の強いヤンキーだと思ってたわけね。」
千代「え、違うの?」
枷檻「いやぁ、この生き方は私が望んだ生き方だから間違いではないんだ。
でも、実際ヤンキーやって許される素性じゃないわけで。」
摩利華「私の家系は昔から投資家の一族でしてね、両親もその意思を継いでいますの。
ところが、私たちが幼少の時に持っていた株や土地が大暴落・・・ほぼ文無しになって私はその段階では、小鳥遊家に養子として出される予定でしたの。」
枷檻「だが、オヤジが『大事な娘を簡単に他所の門へ置いてゆくものではない。』って情をかけて潰れかけてた投資先に人材を派遣したんだよ。」
摩利華「その結果、小鳥遊家の優秀な人材によって会社は復帰・・・
土地も買収して事務所や社員宿舎を建てて社員たちのニーズ解決に尽力してムラなく問題を解決いたしましたのよ。」
千代「だから枷檻ちゃんはすんなりこの家に入れたんだ・・・。」
摩利華「小鳥遊財閥は命の恩人ですもの。」
千代「財閥!!?」
枷檻「そこいらの男が情だけで潰れかけの会社再建出来るか?」
千代「ごめんなさい、一般人がこんなところに図々しくいてしまって・・・。」
摩利華「番長さんだってきっと一般人ですわ。」
枷檻「お嬢様ぶんないようには心がけてんだけどな。」

千代「うわぁすごい・・・私が一生触れることのないと思われていた次元だ・・・。」
グルメ番組で見るような”~~風の~~を添えて”みたいな料理が並ぶ。
千代「見たことあるのはかろうじでフカヒレくらいだな~・・・食べてもいいの?」
摩利華「貴方のために振舞ったのよ。どうぞ召し上がってくださいまし。」
フカヒレを箸で持ち上げる千代。
それを見守る摩利華。
千代「なんでそんなに見つめてるの・・・?」
摩利華「せっかくナイフとフォークがあるのに切り分けないなんてお茶目さん・・・と思いまして。」
千代「ふぁ?あ!!?そ、そうだよね!!普通そうだよね!!なな何やってんだろ私!!」
枷檻「そうか、高級料理出されてテンパるのが庶民っぽいのか。覚えとこ。」
摩利華「枷檻ちゃんは庶民っぽさを学ぶより作法を学んだほうがよろしくてよ。」
千代「あれ?思ったより味薄い。」
枷檻「コラーゲンの塊なんだから味はほとんどスープだしな。」
摩利華「料理というのは味が濃ければ良いというわけではありませんわ。
お気に召さないのでしたら味付けを見直させておきましょうか?」
千代「いや、いいのいいの。醤油かけるから。」
枷檻「はぁ~・・・お前がそんなことをした暁にシェフがどんな顔するか解るか?」
繕いも虚しく、うろたえる千代。
千代「高級料理は私には重いよ・・・お外で庶民のファーストフードたべにいぎだい・・・。」
摩利華「あ、貴女の食べたい食べ方でいいですわ。
ここに住むわけではありませんから・・・。」
千代(あぁ・・・完全に気使わせちゃってる・・・!!)
千代「・・・っていうか枷檻ちゃんって摩利華ちゃんに作法を学びなさいと言われた割にちゃんとしてるよね。」
枷檻「そりゃお前の中に私がお嬢様だってイメージがないからだろ。」
千代「いやぁ、枷檻ちゃんがナイフとフォークでおしとやかに食事をしているのがギャップで可愛いな~と思って。」
枷檻「かっ、可愛い!!?バッキャロ、お前が無作法なだけなのに何言い出すんだよ!?」
摩利華「ということは反対をとれば、私がライダースーツでバキーっと戦えばギャップで可愛いのかしら?」
千代「それはなんか違う気がする・・・。」
枷檻「大体アルカナバトルから外れた摩利華が何と戦うんだよ。アニメや漫画じゃあるまいし。」
千代「ほら、例えば”おしゃれのセンスが残念”とか。」
摩利華「いつも使用人に仕立ててもらっていますから考えたこともありませんわ。」
枷檻「人に頼るのって嫌じゃないのか?」
摩利華「いいえ、私は一人前になるまでだれかの協力を仰ぐことは悪いことだとは思いませんわ。」
枷檻「でも、突然一人になったときの為に実践経験は積んでおいたほうがいいぞ。
・・・って千代・・・お前マジで大丈夫なのか?」
千代は庶民食として出してもらった焼きサンマもボロボロに崩していて、手は油でギトギトになっていた。
枷檻「ったく・・・テンパりすぎて手ぇ震えてんじゃねぇか。
ほら、貸せよ。開いて骨とってやるから。」
摩利華「この敗北感は何かしら・・・?」

摩利華の私室で互の過去や家族について話をしていたら、いつの間にか夕方になっていた。
千代「夕食は普通のものがいいです・・・。」
摩利華「私にとってはあれが普通ですわ。」
枷檻「大丈夫だ。コンビニで適当に買えばいいだけなんだから。」
千代「ファミチキはNGね。」
枷檻「了解。」
摩利華「???」
枷檻は部屋から出る。
摩利華「ずるいですわ!!今日は枷檻ちゃんが一人勝ちではありませんか!!悔しいですわ!!」
摩利華はベッドをぼふぼふと叩いた。
千代「・・・何の話・・・?」

枷檻は玄関で番長と鉢合わせる。
枷檻「よぉ。」
番長「おぉ。」
枷檻はすれ違う前に会話を切り出した。
枷檻「なぁ・・・お前、ホントに何もんなんだ?
・・・他人とは言え千代が殺される可能性が出たときの対応が余りにも冷静すぎたと思うぞ・・・18歳のそれじゃねぇ。」
番長「情報がないほうが危ないと思ったから一旦冷静になろうとしただけだ。
もっとも、相手の気持ちを汲めていなかったというお前の指摘通り完全に落ち着いてはいなかったがな。」
枷檻「あくまでもただの高校生だと言い張るんだな?」
番長「疑り深いな。他人に助けを求めるほど非力な人間がそんなに怪しいか?」
枷檻「非力?」
突然枷檻が番長に殴りかかる。
しかし、番長はそれをかわして枷檻の足をすくい、転倒させた。
枷檻「イテテ・・・な~にが”非力な人間”だよ。
普通の女子高生の動きじゃねぇ・・・足の筋肉も細いがたるみがない。
それに、前兆もなく拳を振るわれたにも関わらず眉の一つも動かさねぇときた。
喧嘩慣れしてるっていうレベルじゃねぇぞ。」
番長「お前が井の中のカワズ君だったってだけだろ。仔犬ちゃん。」
枷檻「挑発してんのか?」
番長「おっと済まない。そんなつもりはないんだ。
むしろ仲良くしたいと思っているよ。
仲が悪いと千代が悲しい顔をするだろうしね。」
枷檻「傷つけてしまったことは気に病んでいるのか。」
番長「当たり前だ。だからといって、ご機嫌をとるのは”らしくない”と思ってな。
正直、どうすればいいのか解らない。」
枷檻「なんだ、てっきり私はお前のこと血も涙もないやつだと思ってたけど、人の心はあるんだな。」
番長「まったく・・・そんなイメージを抱かれていたなんて心外だな。」
枷檻「やっぱ、千代が言ってたとおり不器用なだけなのか。疑って悪ぃな。」
番長「年上に謝るときは”すみませんでした”だろ?」
枷檻「ちっ・・・そーゆーところが気に食わねぇ。」
お互いの口元が少し緩んだように見えた。
枷檻「今度、喧嘩の手ほどきをしてもらいてぇもんだな。」

摩利華「はぇ~・・・これが庶民のお食事・・・。」
並べられた惣菜パンと清涼飲料水を物珍しそうに見つめている。
千代「コロッケパンとかチョイスいいね~。やっぱりこっちのほうが落ち着く~。」
千代はパンを嬉しそうに頬張る。
摩利華「確かに美味しさというのは値段で決まるものではありませんが・・・その・・・やっぱり・・・悔しいものがありますわ。」
枷檻「まぁまぁ、摩利華も食えよ。庶民の味ッ!!」
番長「私も貰うぞ。」
枷檻「おぉ。むしろ番長も食べる前提で買ってきたからな。」
番長「こいつのタメ語は死んでも治りそうにないな・・・。
ん?メロウピンクは売っていなかったのか?いつも飲んでいるのだが・・・。」
千代「???」
枷檻「???」
摩利華「???」
番長「すっ、すまない。あれは地元限定のものだった。
ほら、こっちで言う”カツゲン”みたいなもんだ。」
千代「通りで見たことも聞いたこともないと思ったよ。」
番長「・・・で、突然ですまないが、真剣な話をしてもいいか?」
摩利華「いいですわよ。いつもの調査報告ですわよね。」
番長「そうだ。いいか、思ったより事態は深刻でな。
今、各地から”幽霊が見える人間”・・・つまり、千代の映っていた動画を見て”クロの姿を見た人間”がここ最凝町に向かってきている。
表沙汰真相を確かめるためと掲示板では言いつつも、内心何を考えているかは言うまでもあるまい。
今までよりもはるかに警戒を強める必要がある。
そのために、しばらくこの亜万宮邸を集合拠点にしたいのだが、問題はないか?摩利華。」
摩利華「ええ。三人の顔は屋敷の大体の人間が把握しておりますので。
”玄関で騒ぎを起こしたり”しなければ、大丈夫ですわよ。」
番長は恥ずかしそうに咳払いをする。
千代「???」
番長「とにかく、今は千代の安全を最優先に考えて行動することが大切だ。
逆位置時間にいてやれないのは残念だが、仕方あるまい。
相手も流石にそこまでは把握してきていないだろうからな。」
枷檻「私だったら夜にいけるけど?」
番長「本当か?」
枷檻「あぁ、いっつも夜中は外ほっつき歩いてるから怪しまれないしな。」
番長「是非頼みたい。千代のことを見てやっててくれ。」
千代「え、いきなりお泊まりなんて言われてお父さん怒らないかな~。」
枷檻「お、お泊り!!?言われてみればそうだな・・・。
なんか、そういう言い方をされると急に照れくさくなってきた・・・。」
番長「そのへんはそっちに任せるから、納得のいく結果を出してくれ。」
摩利華「千代ちゃん、ホントは私のほうが泊まりに行きたいのだけれど、私の家族は厳しいので・・・惜しいですわ。」
枷檻「なんで羨ましそうにするんだ。遊びに行くわけじゃないだろ。」
摩利華「え~、でも、寝るときはやっぱり不安だから一緒のベッドでしょ。
・・・千代ちゃんと二人きりで一つのベッドに・・・むはぁ~。」
千代「何を想像してるの!!?特別なことは何にもないよ!!?」
番長「この摩利華という女はイマイチよくわからんな。」
クロ「ところで、我はいつも会話に入りそこねているが、話を切り出したほうがいいのか?」
枷檻「うわっ、毎度変なタイミングで出るよなぁ・・・びっくりするから勘弁してくれ。」
番長「特に意見がないのなら、千代を守るという使命を全うしてほしいというだけだな。」
千代「そうだね~・・・こうやって話している時に周りに危険がないか警戒してくれると嬉しいな。」
クロ「そうか。なにかに気づいたら逐一報告する。」
千代「お願いね。」
番長「じゃあ、今日のところはこれで解散するか。」
摩利華「そうですわね・・・あまり遅くなるのもいけませんわ。」
千代「じゃ、あれやっとこ!!」
枷檻「気に入ってたんだ・・・。」
摩利華「せ~のっ。」
一同「ぱにゃにゃんだー!!」