読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

DAI-SONのアレやコレやソレ

創作ライトノベル、「ハーミット」「愚者の弾丸」を掲載。「ハーミット2」連載中。不定期更新です。

「ハーミット」 ACT.5 安息

7月8日(日曜日)。
部活動に所属していない千代にとっては休日である。
しかしながら、今という今ばかりはのんきにしてもいられないのである。
二度も公然で戦いをしてしまったために、インターネットによからぬ情報が拡散してしまっているのである。
幸いにもクロで戦っているうえに逃げの戦法を取る千代は、映像になるとただの被害者であるために、とりわけ目をつけられることはなかった。
本当にまずいのは、能力者には映像のクロが見えてしまうため、手の内がバレてしまっている可能性が非常に高いのである。
遠距離に攻撃できる能力者に奇襲されてしまっては一貫の終わりである。
そのために千代は今日も不安によって寝不足であった。
千代「便秘になった・・・つらい・・・生理が来たらもっとつらい・・・。」
クロ「夜はちゃんと寝ておかなくてはダメではないか!!
生命力を回復しておかなくては、最悪の場合我が出られなくなる可能性だってあるのだぞ!!」
千代は疲労と寝不足によって、クロの注意に対しても上の空である。
千代「あっ、そういえば枷檻ちゃんはマスコミに追われていないだろうか?」
最初に襲ってきた男子学生に至っては他人なのでどうでもいいが、今後協力関係に置かれる枷檻にはマスメディアの餌食になってもらっては困るのだ。
千代は早速電話をすることにした。
千代「・・・・・・もしもし枷檻ちゃん?マスコミに追われてない?大丈夫?」
枷檻「はぁ・・・なんのことかと思えば・・・そんな心配してたのか?
大丈夫だよ。オヤジに色々頼んどいたから、今は例の映像はCGによるイタズラだって情報に変わってるはずだから。」
千代(枷檻ちゃんの父親って何者なんだろう??)
枷檻「ホントはオヤジになんて頼りたかなかったんだけどよ。仕方ねぇだろ。」
千代「いや、何事もないなら構わないんだけどね?」
枷檻「そか。私あと15分もしたらバイトだから。じゃあな、頑張れよ。」
千代「応援してくれるんだ~。やっぱりいい人だね~。」
枷檻「く、くだらねぇこと言ってないで、自分の身を案じやがれバッキャロ!!」

昼は誰とも連絡が取れない。
どうやら番長もバイトをしているようで、LINEを送ったところ12時頃に「昼は会えん」とだけ返事が来た。
昨日も一昨日も、夜の自習に手がつかなかった。
体力がないことは自覚はあったが、すやすやと寝てちくりと一突きで殺されましたなんて言おうものならたまったものではない。
不安で精神が落ち着かず、うつらうつらと意識を混濁させる。
クロ「千代、いい加減十分な睡眠を取ったらどうなんだ?
今、千代が最悪の状態になってると分かっていないのか?
いくら正位置時間だとしても、ベストコンディションでいなければ確実に負けてしまうぞ?」
千代「なによ・・・親じゃ・・・あるまい・・・し・・・・・・。」
半ば昏睡するような形でベッドに倒れ込む。
ここまで消耗しては、否が応でもこの結果を免れることはできなかっただろう。
クロ「まったく・・・寝顔になると一層頼りなく見えるぞ・・・我が主よ・・・。」
クロもゆっくりと声を潜めた。

番長「だめだね。」
切り返される一言に怒りすら覚えた。
夕方に目を覚ました千代は、自宅に枷檻と番長を招き今後の戦闘の方針について話すことにした。
番長「いくら武器を持っていたって、その場に応じて出せないなら何の意味もない。
それこそ、最初に千代がやろうとしていたという食料や日用品の貯蔵をしたほうがよっぽど有意義だ。」
千代とクロが用意した防御策は全否定された。
枷檻「なんでだよ。武器はたくさん持ってたほうが役に立つんじゃないのか?」
番長「武器それぞれはいいものだったりお荷物だったり差はあるだろう。
しかし、技術でなく物で対策を取っている以上、何を使うか思考してその後わざわざ出さなくてはいけない。
戦闘するにあたって、ゆったり考えを巡らせる暇もなければ武器があると慢心してしまってはむしろ弱くなってしまう。
もし武器を持つならば、1,2種類に絞るべきだ。
たくさんあっても仕方がない。
武器をたくさん持ったほうがいいって・・・お前らはゲリラか?」
枷檻「ンだよ部外者の癖してでかいツラしやがって・・・。」
番長「でかいツラも何も協力を承諾してもらった以上、お前たちには強くなってもらわなくては困る。
それに能力を失ってバトルの参加権がなくなったお前も部外者じゃないのか?枷檻。」
枷檻「その態度は人にモノを頼む態度か?」
番長「私は千代とクロに頼んでいるのだ。お前に頼んだ覚えはないぞ?」
枷檻「んにゃろぉ~ッ!!喧嘩売ってんのか!!」
番長「お前歳はいくつだよ。」
枷檻「昨日誕生日で、16だ。文句あっか?」
番長「私は18だ。年上にはもう少し然るべき態度をとれよ。」
千代「あの~!!作戦会議じゃないの~?」
番長「スマンスマン。
小娘がキャンキャン吠えるのを見るのが面白おかしくてな。
つい煽りたくなった。」
番長は妖艶な笑みを浮かべる。
もしかしなくてもきっとこの人はサドなのだろう。
番長「そういえばどうして千代は枷檻と一緒にいるんだ?嫌味ではなく、似たような趣味でもなさそうだが?」
千代「だって友達だもん・・・初めて出来た、友達だもん!!」
番長「・・・・・・・・・・・・なんかゴメン。」
千代「謝らないでッ!!つ、番長ちゃんだって友達だよッ!!」
番長「頼みごとをしただけの私が友達・・・?」
千代「そうだよ。頼みを解決したいだけなら。合わないでLINEするだけでいいじゃん。
でも、こうして会って話してる。一緒にいて不快そうな顔もしないし、むしろ楽しそうだよ?
それとも番長ちゃんは私のこと、友達だとは思ってないの?ただの便利屋さんだと思ってるの?」
番長「・・・・・・・・・。」
千代「え゛?やめて?沈黙されると不安になる、やめて!!何か言って!!?」
番長「あ、いや、友達だと思うぞ。そっちのうるさいのはどうだかしらんけど。」
枷檻「うっせ!!こっちから願い下げだ!!」
中指を立てる枷檻。
千代「だーかーらー、そういうのはよくないよ?枷檻ちゃん。」
クロ「肝心の作戦は立たなかったな。」
枷檻「うおっ、いたのか。びっくりさせんな。」
千代「あ~っ、もうこんな時間・・・。」
スマホの時計は9時を示していた。
枷檻「まぁ、バイトある日は仕方ねぇだろ。」
千代「そろそろ返さないとお母さんに怒られるから、また明日ね。」
千代は二人を玄関先まで見送った。
その後千代は、アルカナバトルなんて全部嘘で、こうやって友達と一緒にいられたら・・・と思った。
真夏の熱帯夜の風が頬を撫でた。