DAI-SONのアレやコレやソレ

創作ライトノベル、「ハーミット」「愚者の弾丸」「ハーミット2」を掲載。更新停止中です。

「愚者の弾丸」 EX.27 這い這い追うぞ欲望は

生還の噂がパラレルワールドと結びついている。おかしな話だ。だって、この世界にいるのなら、どの平行世界にいようが死んでいることには変わりないからだ。生還と平行世界を理屈で結ぶのは難儀な話である。だが、平行世界から人が来るということは、クリフ…

「愚者の弾丸」 EX.26 どうしようもないこと

ここに意味などなかった。強いて言うならば、むしろ意味を失う場所だった。この残酷にも楽園のような世界で、ただ悠久の時間を貪る日々。ゆく果ては、消えてゆくか消されるか。ただそれだけの話だった。この街は、この世界にありふれた、そんな話のひとつの…

「愚者の弾丸」 EX.25 きっと誰かの最期の地

バリバリと空気を揺らし、ショッキングピンクと赤で彩られたド派手なバイクが土煙を上げて迫ってくる。サクリファイス「俺たち、あんなバカみたいなのに気付かなかったのか?」爆音はさらに勢いを増す。番長「バーカ。気づいてなかった訳無いだろう。むしろあ…

「愚者の弾丸」 EX.24 さよなら傷だらけの匣よ

ブリンク「このまま発ってしまわれるのですね。」ブリンクはカップに白湯を注ぎながら言う。番長「おい、別に紅茶が飲めないわけじゃない。」そう言いつつも、番長はそのまま受け取る。水面に映る天井。隅は爆破によって多少綻んでいる。いや、目の前の壁だ…

「愚者の弾丸」 EX.23 傍観者になってはいけない

マリンは、泣き明かしては眠りを繰り返し、ずっと宿の一室に閉じこもっていた。――――デジャヴュ。彼女は身を持って知っていた。偽りの平和なんていつかは壊れてしまうのだと。街はひどい有様だ。チヨが配り歩いたり、飛ばしたりした宝石のせいで、建物は歯抜…

「愚者の弾丸」 EX.22 事実は芸術よりも奇なり

番長「平行世界…。可能性の存在。」 そう。目の前にいる藤原千代は、「ある一時まで同じだった」だけの別人。 パラレルワールド、とも呼ばれる違った未来から来た藤原千代なのだ。 「非常に人に知覚されにくい」という、「隠者の才能」を持っているところま…

「愚者の弾丸」 EX.21 延、トリック・アートの世界

マリンは、生前はいつも偽りの平和を眼下に広げていた。 だが、別にそれが嫌いなわけではない。 むしろ、誰かを守るための優しい嘘なら、このままでもいい、と思った。 今のこの町も、そんなハリボテ固めの平和を乱される、かつての風景と同じものだ。 昔は…

「愚者の弾丸」 EX.20 続、トリック・アートの世界

双銃の獲物となった少女に似た形なき貌。しかしながら、目的を少し履き違えているのではないかと思った。 後にマリンは言った。無差別に似顔絵を送りつけるなら余りにも消極的で、マリン個人を狙っているのなら、こんな回りくどいことをして殺すよりも無理矢…

「愚者の弾丸」 EX.19 トリック・アートの世界

その後も、この街の人気のあるところを狙って散策し、日は沈んでいった。大通りに面する、赤と白のボーダーという派手な外壁塗装をした宿に泊まってゆくことに決めた。この街は、夜でも活気を失わない・・・ように見える。派手な照明や装飾が賑やかに夜の家々を…

「愚者の弾丸」 EX.18 煌びやかな冥界の香り

芸術の街 ホログリフ。様々な魂たちがそれぞれの貌(かたち)を表現し合う色彩豊かな賑わいを持った街。人が多いので、一応マリンはだれそれに付け狙われないようにフード付きの外套を着せることで話がまとまった。 麗「しっかし目がチカチカするな。こんなに…

「愚者の弾丸」 EX.17 魔列車インビンシブル・クルセイダー

一行は、芸術の街 ホログリフを目指して新たなる旅路についたのだが、これからはマリンを守りながら進んでいかなければならず、これまでのようにうだうだと珍道中するのはためらわれた。しかし、車や馬車といった便利なものは持っておらず、手に持っているの…

「愚者の弾丸」 EX.16 痛いの痛いの飛んで行け

番長「悪いな。骨折り損の草臥儲けだっただろうに。」ハインツとブリンクは、結果的にそこに居もしない人物を探していたということになったわけだ。ハインツ「構いませんよ。もう争いは終わったのです。」笑顔で答えるが、疲労の色が出ているあたり律儀に街…

「愚者の弾丸」 EX.15 王たる領域は不可侵

到着した王室の前、扉は開いていた。だからといって迎え入れているという雰囲気は感じず、番兵が柱に張り付いていて重苦しい雰囲気を放っている。だが、なぜか番兵はピクリとも動かない。心音は聞こえるのに動こうとしないのだ。王には微動だにすることも許…

「愚者の弾丸」 EX.14 信じる者は救われず信じられた者が彼らを救う

マーロゥ「それでは第一問!!」この部屋にはものが少ないせいか、やたらと声が響き渡る。案外、そんな些細なことがプレッシャーになってしまうものなのだ。マーロゥ「王が愛した姫はひとりである・・・マルかバツか!!」千代「それはマルね。代わりがきくのなら気…

「愚者の弾丸」 EX.13 順序と正解

サクリファイス「落ち着いたか?」泣き止んだ番長の顔を伺う。サクリファイス「空気を読めねぇようで悪ぃけどよ、ここが敵の本拠地の真っ只中ってことも忘れないでくれよな。」番長「お前に言われる筋合いはない。」少し鼻声気味ながらも、しゃんとする彼女の…

「愚者の弾丸」 EX.12 言葉は人

時を同じくして、麗は武器庫へとたどり着いた。そこにも刺客は待ち受けていた。それは、肉塊のような巨大な男だった。太った男「トゥへへ・・・ねずぅみが一匹・・・。」麗「悪いが俺は人間だ。」太った男「ふぁ?そんなことぉは、どぉでもよぉし。」敵は、巨大なメ…

「愚者の弾丸」 EX.11 進め!!支援遊撃部隊最前線

敵兵「”ダンプ・ビースト”!!」城に入った途端に手厚い歓迎が視界を覆う。頭はリボルバー、体は黒犬。図体がでかく、上を向けば二階の天井にぶつかってしまうため、吹き抜けになっている中央ホールで使うしかなかったのだなと解る。異形犬「ガルルルルッル!!…

「愚者の弾丸」 EX.10 眩しすぎた太陽

ウロボロスの環。それは絵に描かれたときは自らの尻尾を噛む蛇の姿を描かれる。永遠にたどり着くことのない結末。堂々巡り。無限の矛盾。千代は人を殺すことを否定しておきながら、仲間を殺されることを仕方ないと目をつむった。しかし、仲間の命が尊いと自…

「愚者の弾丸」 EX.9 欠けたダイヤモンド

千代「どうしてわかってくれないの・・・?」手を振りほどかれた番長はそれ以上は何も言わずに地下室を後にした。それに続いて、その仲間も次々と部屋を出る。千代「仲間だとか敵だとか、そんなので命の価値を測るなんておかしいよ・・・。」枷檻「番長の言い分だっ…

「愚者の弾丸」 EX.8 導かれし者が己を信じた時

麗「どうして隠してたんだ?」腕の腐った部分に薬草を煎じた液をかけながら尋ねた。サクリファイス「あー痛い痛い!!痛い痛い痛い痛い!!それやりながら訊くことじゃない!!」番長「なっさけねぇ・・・。」腐っているから痛点が死んでいる・・・なんてことはなく、激痛…

「愚者の弾丸」 EX.7 漣いずれ荒波へ

一行は今まで以上に警戒してピリピリしている。理由は当然、大所帯になってしまったことで単純に的が大きくなってしまったためである。全員が戦えるのならまだしも、自警団の三人は素人同然で、非戦闘員のシスターまでいる始末。戦いの主軸となっている番長…

「愚者の弾丸」 EX.6 臆病風に漣立つ水面

コーヒーに注がれる練乳のように少しずつ意識が層を作ってゆく。やがて、無意識の黒と天井の木の色が入れ替わり、重い瞼をひらききる。だが、瞳はまだ世界を捉えておらず、まだ夢の中にいるような気分だ。その甘ったるい意識の中で、かつてともに戦った少女…

「愚者の弾丸」 EX.5 箱庭にさえ蔓延る棘

広い広い草原の上に放り投げられたように佇むひとつの小屋。長い旅路を助けるために、防御系アーツを持つ人間たちが良心で建てた慎まやかな宿。焦る気持ちはあるが、ミツクビの状態と夜の危険性を踏まえると立ち寄らない選択肢など残されてはいなかった。立…

「愚者の弾丸」 EX.4 生命の秤は愚かしく

一方で、紛争は更なる局地を迎えていた。戦地である狂信者の街 クリン・トラスト・・・そこは城と城下町によって出来た中世的な雰囲気を出す街。今までは、その城と町を結ぶ門の前で敵兵を食い止めていた。しかし、医者派がわの”人を殺してはいけない”という指…

「愚者の弾丸」 EX.3 高原と未踏の空を仰ぐ

番長一人なら馬に相乗りする予定だっだようだが、あいにくと人数がかさんでしまったため馬には荷物持ちをさせることにした。馬は至って健康的で、普段の世話の質の良さが見て伺えた。その馬を御する兵士の名はハインツ=ブラウン。生前は誇り高き城の守り手…

「愚者の弾丸」 EX.2 戦火の風上は遥か彼方

相手は死んではいなかった。だが、翌朝に”呪刻”によってアーツを封印され、無害化された。”呪刻”というのは医者の特権で、罪を犯した者からアーツを奪うものである。この世界における医者という職自体、妖精によって心の清らかさを認められた人間のみがなれ…

「愚者の弾丸」 EX.1 心は武器

できれば人なんて殺したくはない。生前、自らを守るため、仲間を守るため、人を殺めてしまった経験はある。だが、殺さずに解決できるのであればそれに越したことはないのだ。生き返られるのなら生き返りたい。でも、罪もない人間を100人殺すだなんて鬼畜には…

「愚者の弾丸」 EX.0 誰が為に死に賭し墜ちる者

3018年 某日・・・ ボディスーツの男「さぁ、どうする?」膠着状態になった場面、問いかける男は余裕綽々だった。番長は過去を改変し、タイムマシンによって元の時代に戻った。だが、彼も番長が到着する直前を狙い、予備のタイムマシンで追ってきたのである。帰…

「ハーミット」 ACT.LAST 愚者・下

千代「い・・・たい・・・。」枷檻「千代!!大丈夫か!!」千代「痛いってば・・・。」枷檻は千代の手を握り潰さんとばかりに強く握っていた。枷檻「ご、ごめん・・・。」枷檻は手を解き、涙を拭う。枷檻「よかった・・・本当に・・・よかった・・・・・・。」千代「ううん、むしろこれ…

「ハーミット」 ACT.32 愚者・上

千代「何・・・?今のは・・・。」意識を支配していた白昼夢から覚める。枷檻「どうした、さっきからふらついてるじゃねぇか。」摩利華「無理もありませんわ。二人も連続でお相手したのですから、相当疲弊しているのでしょう。」千代(今回は今までと違ってはっきり…